壱 若雉と。 噂は何度か耳にしたことがある。酷く浮ついた男である、と。まぁ中でも一番顕著なのは女性問題だろうか。悲しい事に親友をその手で危めてしまうという事があってからだというそれはある意味では可愛そうな話であるのだが、如何せん、かなり経った今でも直る気配がない。 厄介な素人娘が好みらしく、中将という肩書につられて夢見た女が泣きながら帰るのを何人か見た。あまり他部署に関わらない俺がこうなのだからきっと桁は少なくないはずだ。 なぜあまり人に関わろうとしない俺がこんな真剣にクザンの事を考えるかというと、めんどくさい事に先日、親戚のセンゴクさんが落として行った爆弾に由来する。 『頼みがある、』 だいたいコネもありとんとんと不自由なく出世できたのはこの人のおかげだ。 よって、よっぽどのことじゃなければ聞いてやりたいとは思っていたが、こんなことを頼まれるとは。 back |