哀 hate you. 何年も蓄積された違和感。それは、ふとした瞬間に自分にそれを気づかせるのには十分だった。誤魔化すように笑う男の瞳を毎回覗くたびに、見つけるのは嘘ばかり。それが嘘であると気づけるようになったのは、男がいつだったか海賊との戦いで深手を負って寝込んでいる時のうわごとであった。 『俺は青雉なんかじゃない、それは×××であるべきなのに、』 弱音にも聞こえたナマエの一言に違和感が残った。聞こえてきた名前は、特に代わり映えのしない新人の海兵の名前であったから、余計に。 なぜ? 青雉を襲名したのはナマエが初めてで、彼の他には"青雉"なんて男はいない。それなのになぜ彼はあんな新卒海兵を"己"だと言ったのか。いくら頭を巡らせたところで堂々巡りしかしない思考回路に嫌気がさす。 君は青雉じゃない。それなら君は? 「ねぇ、ナマエ。」 「ん、なんですか。」 「君は、何者なんだい?」 「・・・いきなり、どうしたの。」 「この前、君の口から聞いたんだよォ?」 自分は青雉ではない、というそれが真実だとするならば、目の前の男は誰なのだろう。それはナマエという男には違いないのだが、それだけにするには違和感が残った。 「・・・何言ってるんだ。この世界をどれほど探しても、青雉は俺以外には居ないだろう?」 にこり、と本心を見せない微笑みで今日もナマエが己に嘘をつく。それはわっしにとっては真実であるのだが、ナマエにはそうではないのだろう。そうに違いない。 「君は、そうは思っていないみたいだけどねェ。」 「・・・・・・」 無言は肯定だろうか否定だろうか。確かめる術の瞳はすでに閉じられていた。 「もし君が否定したとしても、今の君は"青雉"以外の何者でもないんだけど。」 eye hate you 少なくとも、それが世界の、わっしの中の答えである。 back |