晴れ時々、砲丸 がしゃん、ばりん、がしゃん、ごとん。 執務室で真面目に仕事をしていた俺の頭に向かって、飛んできたのは重たい砲丸。とっさに能力を発動したので、頭に砲丸直撃しても床が氷とガラスの破片でぐちゃぐちゃになるだけですんだものの、俺が自然系じゃなきゃ死んでいた。そう考えて、クザンが外出中でよかったと胸を撫で下ろす。あいつに当たっていたら目も当てられないから。 窓から顔を乗り出して怒鳴ってみたが、外にいたのはやはりガープさん達だった。砲弾じゃなく砲丸だったところをみるときっと投げたのは訓練生だろう。 「ガープさん!」 今投げたの誰、頭に当たったんだけど!と言えば訓練生たちは一様に顔を青くさせて首を振った。名乗りでて謝るくらいはあっても良いと思うんだけど。 「今謝りに行かせとるから部屋で待っとれ!」 「窓も割れたんですけどー!」 窓無いの辛いんだけど、と続ければ「形ある物はいつか壊れる、」なんて言って笑い飛ばされたのだが、本当あの人は憎めないからタチが悪い。 「お前さんは平気じゃろ!」 「頭半分欠けて無事って言うなら平気だけどさぁ。」 部屋の中、大惨事だって!と叫んだところで部屋のドアが勢いよく開いた。 「すみませんでしたー!」 スライディング土下座の勢いで入ってきた二人を蹴り飛ばす。軽くやったつもりだったんだけどなかなか力入ってたみたいで嫌な音がした。だってスライディングとか床にはガラスだとかいっぱいあるんだから危ないでしょうが。 「ほら、やっぱり怒ってるって!」 「でも、謝るしか!」 壁に向かって吹っ飛んでいったから、ちょっと心配だったけど・・・なんでもないように立ち上がる二人。伊達にガープさんに鍛えられてるだけあるな、と感心してしまう。 「大丈夫だった? 思ったより力入っちゃったからアレなんだけど。」 「だっ、大丈夫です!」 「俺達頑丈なんで!」 なら良いけど、二人に近づくと靴の下でガラスがじゃりじゃりと不快な音を立てる。ついでに俺のせいなんだが、氷が溶けだしているのか絨毯に所々黒い水のシミが付いてしまっている。またクザンにどやされるなぁと苦笑。 「で、まぁいいけど。後片づけしてってくれる?」 窓はどうにもならないからガラスの破片と砲丸だけ片づけて帰ってくれれば良いんだけど。今回はまぁこんなに頭を下げられたら許さないわけにはいかないでしょ。俺も不可抗力とはいえ蹴ってしまったし。 「はい・・・!」 ぐすぐすと鼻水を啜る様もなんだか俺が虐めたみたいでなんか嫌だし、クザンが帰ってきたら無駄になんか俺まで怒られそうだ。 「すみませんでした!今日一日好きに使ってやってください!」 な ん だ と ! 「いや、それ片付けたら帰ってくれていいんだけど。」 「いや、早く帰りすぎると僕達、ガープさんに殺されちゃいます!」 「すみません、よろしくお願いします!」 また土下座の体制にに戻ろうとする二人をなんとか押し止める。 「じゃあ、さ」 適当に楽でもしましょうか。雑用とご丁寧に背中に書かれているし、これは人助けだ。よっぽどないことだし、有用に使っても罰は当たるまい。 次々に頼む事をてきぱきこなしていく二人に感嘆する。クザンもやる気だせば早いのだが、やる気が基本的に無いからか、こんなに仕事が早く終わった事なんて無い。調べ物だとか資料だとかもさっと出てくるし、言うことなしである。 思った以上に働いてくれた二人と、自分のぶん。合わせてコーヒー三つマグに入れて持ってくると二人は顔を見合わせて笑った。 晴れ。時々、砲丸 「次は何をしたら?」 「んー、ありがとう。もう帰って良いよ?もうやって貰う事無いからさぁ。」 でもそれでも帰れないと言うから、好きな事してなさいと投げれば、元気の良い返事が返ってくる。いや、若いね。 「これでも僕、腕には自信がありまして!」 「へぇ、何するの?」 「マッサージです!」 机にかじりついていたから、たしかに今日はありがたい。甘んじて申し出をうけたのだが、タイミング悪くクザンが帰ってきてしまい、なにやら悪い誤解をしたようで扉をすごい勢いで締めて走っていってしまった。 「コビーくん、ヘルメッポくん。一大事だからクザンくん全力で捕まえてきて。」 好意のち、誤解。 結局、稚児趣味だという噂が出回ってしまったため、色んな所から問い詰められ弁解をすることになってしまった。俺はなにもしてないのにサカズキとボルサリーノには怒られるし、本当災難だ。大体の原因であるガープさんに至っては俺がその話をしたら大笑いをするし。俺は笑い事ではないのに、だ。ああもう、ガープさんに関わるとろくなことにならない、と変わってしまった話題に適当に相槌をうちながらこっそり溜息を吐いた。 back |