其れが罪と知っていても 下らない、と思っていた七武海会議に足をなんとなく向けた時だった。面白い事があれば良いのだが、海軍船から降りても不信感の目で海兵が形だけの敬礼を向けてくる。やりたくないんだったら何も迎えなんて要らねぇのに。まぁご苦労な事だ、これも面倒な組織に属するが故になんだろう。俺には一生理解できそうも無い。 「・・・ふぁっ、」 欠伸を噛み殺し切れていないせいで変な声が漏れているぞ、そこの海兵。そんな眠そうなツラを見ていれば、こちらもなんだか眠くなってくる。ピンクのコートをゆらしながらそれを嘲笑って、海兵の中から適当な2人に向けて能力を使う。 相変わらず趣味が悪い、なんて上の奴らは言うのだろうが、俺は気にしてはいない。楽しければ、それでいい。指をゆるやかに動かせば思うがままに操り人形の出来上がり、なんて笑いながらお迎えにきてくれた海兵さんにショーでも見せてやろうとすれば、斜め向かいに隊列から一歩進み出た男。 「Mr.ドンキホーテ殿。」 「フフフッ!!」 面白い。からかってやろうと指で能力の糸を操り、綺麗に被っていた海軍帽を落としてやる。普通はビビって驚くのだが、目の前の男はそれにも動じず、じっと俺を見据えて言葉を紡ぐ。 「あー、そいつらも遠征帰りで眠いようだから離してやってくれないか。」 話が支離滅裂ですまない・・・と頭を下げる男の髪の毛を掴んで顔近くまで引き上げる。じっと見つめてみても、ひどく澄んだ瞳は濁ることはなくこちらを睨みつけている。ぞくり、舌なめずりをしたくなる程のこの高揚感は、どう考えても目の前の男に対する執着心だ。 「離しても良い、が・・・」 指で遊んでいた海兵を、能力を解除して地面に放り出す。俺はこんな下らないやつらと遊ぶより、目の前のこの男と遊びたい。 「かわりにお前が遊んでくれるんだよなぁ?」と口角を上げながらにたり、と笑えば、男はさっきまでの眠気を引っ込めて俺に真面目な顔で言い切った。 「・・・会議終わったらな。」 とりあえず会議に出席させておいて、その間に帰宅するつもりなのだろう事は一瞬で把握出来た。 「フフッ・・・逃げるなよ、」 先程の言葉に釘をさしつつも、男を地面に下ろしてやる。ここは海軍本部。わざわざ安全な本部から逃げだそうとする兎を俺が止めるハズがない。殊の外、事がうまく進んだことに上機嫌になりながら会議室に行くふりをして室内で足を潜める。そこからはもう簡単だった。男が眠そうに目を擦り擦り帰るのを後ろから付け、大体場所が検討ついた所で先回りする。 「なんでお前が、俺の家の前に居るんだ。」 「さっき見送ったハズなのに」とここに来て、やっとこいつは表情を驚きに変えて俺を見た。 「・・・会議はどうしたんですか、Mr.ドンキホーテ。」 「なんで逃げた?」 「逃げるわけ無いじゃないですか。仮眠取りに戻っただけですよ。」 「・・・喰えねぇ、将校さんだぜ。」 「そりゃどうも。」 さぁどうしてやろうか。会話だけで満足するほど、俺はつまらない男じゃない。にたり、と笑えば男は顔に苦笑を浮かべた。 「・・・本当の所、何しにきたんだ。」 「遊んでくれるんだろ?」 「会議終わったらな。」 全く面白いことを言う男だ。お互いあの時の約束などとうに無効にしたくせに、まだ言い訳を続けるつもりらしい。それならこちらも同じようにからかってやるしかない。 「会議なら今頃終わる頃合いだぜ、フフッ」 「・・・・・・わかった、何して遊ぶんだ。」 「じゃあ、デートしようぜ、デート。」 「は?」 いきなりのデート発言にぽかんと口を開けてしまっている男。からかっているのかと、表情がから何もかもが、そう訴えていたが聞いてやる義理は海賊にはないだろう。 「・・・どこ行くの。」 「んー、」 「じゃあ、メシでも食べに行くか。」 「それでしたら、お供させていただきますよ。」 其れが罪と知っていても 全て笑いとばすようにして、気づかないふりをして、楽しい時だけこれからも切りとって行けたらいい。 俺と彼のこの奇妙な関係が悪いことだとは知っていても、彼という存在を見つけてしまった以上は、なかった事にはできないのだから。 back |