一月一日 いつもながら五月蝿い船の上が、今日は何時にも増して五月蝿い。それもそのはず。この船に乗っている末っ子の誕生日兼、新年会である。先日までどんちゃん騒ぎを大晦日だの、クリスマスだのやっていても、総じて祭り騒ぎの好きなのが海賊というもので、今回も何故か宴に発展している。 「・・・いい加減、なんか飽きたな。」 がやがやと騒いでいる連中は酷く楽しそうだから、あまり表だっては言えないのだが。 連日の騒ぎだとあまりもう話すことも言い尽くしてしまっているし、一発芸なども、持ちネタが少ない奴に限ってはもう何度も繰り返すものだからそろそろ面倒くさい。 「ナマエ、飲んでるかよぃ?」 ふらふらと上機嫌でこちらに千鳥足でやって来る我らが隊長は、なんだかんだ言いながらも宴が好きな方の人種だ。それに短く答えて、少し座れる場所を隣に作る。 「・・・よっと、」 ひょいっと定位置といわんばかりに俺の隣に座ったマルコ。ふわふわと柔らかい金髪を風に靡かせながら頭を俺の肩に預ける。 「・・・つまんねぇかぃ?」 「・・・いや、めでたい事だからな。」 つまらないかといわれれば、つまらない部類には入るのだが。弟の誕生日だ、参加しないわけには行かないだろう。それに飽きたのは宴だけであって、祝う気持ちは純粋にある。 「そうかよぃ。」 へらり、と酒で上気した赤い頬を緩ませて無防備にマルコは笑う。あまりに綺麗に笑うものだから色々押さえ切れなくて、衝動に任せてそのまま唇を重ねた。 「・・・っ?! なにすんだよぃっ!!」 誰か見てたらどうする、と途端に酔いが醒めたように慌てるマルコに、次いで更についばむようにキスを贈る。 「大丈夫、誰もみてないから。」 みんな宴に夢中だから大丈夫、なんて根拠のない言葉で誤魔化す。その言葉に不審を抱きながらも、ふわふわした頭で誤魔化されてしまう彼が好きだ。普段はあまり甘えてくれないのが難点なのだが、その分酒が入るとガードが緩くなるなら、釣り合いはとれているのだろう。 「・・・なら、いいよぃ。」 「・・・何が良いんだ?」 後ろからひょいっと覗き込むように現れたのは今日の主役、エースで。全く・・・空気読めよ!と突っ込みたくなる所を我慢して微笑む。 「あー・・・エース・・・」 横で小さくマルコの体がガタガタと震えるのが解って、俺は背筋を冷や汗が伝う。これはまずいんじゃないだろうか。 「・・・まぁ特に意味はないんだ。 それよりお誕生日おめでとう。」 「おぅ、ありがとな!」 「ほら、マルコも。まだ言ってないんだろう?」 「う・・・・おめでとう、よぃ・・・」 「おぅ、そんでさっk「エース、主役がこんな隅に居たら不味いだろう?」えー・・・!」 蒸し返してやるな、と首の根っこを掴んでやれば、しゅんと項垂れてしまう。流石にコレは無下にしすぎたか、と俺がおろおろしていると、さらに爆弾投下。 さらっとそれを発言する辺り、怖い物知らずというか無邪気というか、大物というか。 「なー、ナマエ、さっきマルコにしてたみたいにチューしてくれ。」 誕生日だから良いだろ? なんて軽く言われた。瞬間、世界が止まったかと思った。 「は・・・・・・?」 首がギギギと音がしそうな程ゆっくりとマルコの方を見れば、座った目をしたマルコ、そして反対側には完全に出来上がって上機嫌なエース。これは、してもしなくても俺は死亡フラグじゃないか。 「えっと・・・・?」 新年早々、大荒れです 「・・・っ、ナマエは俺のだよぃっ!!」 (マルコ・・・! 嬉しいけど、みんなこっち見てる・・・!!!) back |