次回に期待。 「ああ、Mr.ドンキホーテ殿。 またいつものお遊び・・・か?」 おや、と首を傾げてしまったのは目の前の男が苦虫を噛み潰したかのような顔をしていたから。ここに来る時、男は異様に上機嫌なものだから今回は酷くなんだか対応に困る。語尾が探るようになってしまうのもこれは仕方のないことだと思っていただきたい。 「・・・あのな、ナマエ。」 「・・・どうかしました? 顔色悪いですよ。」 今日もちょいと焦らしてから遊んでやろうと思っていたのだが。随分と今回は勝手が違う相手に、机の上の書類を放りだし駆け寄る。 ゆっくりと吐き出された言葉は酷く弱々しい。 「俺、もう来れなくなるかも。」 「へぇ、またいきなりですね。・・・飽きた?」 それだったら傍若無人なこいつのことだ、いきなり連絡つかなくなるとか。あとはなんか電話口で大声で笑いながらとかそういう事だと思ったんだが。意外にしおらしいのかもしれない。 「違ェ・・・理由は言えねぇが。多分あとになりゃ解ると思う。」 「へぇ・・・、例えば七武海辞める、とか?」 冗談で言ってみたのだが、男はそれもどこか視野に入れている様子だ。 「まぁ、可能性としては無く、ねぇ・・・かもな。」 「何でお前、今日そんな弱気なんだ。」 視界に揺れるピンクのコートもどこかしゅんと萎れてしまっているようだ。 「・・・それで、お別れでも言いに来たのかな?小鳥ちゃん。」 「ばっさり言うな、カワイ子ちゃん。あァ、間違っちゃいねぇ。」 「・・・おや、あっさりだな。もうちょっとなにかあるかと思ってた。」 「・・・俺は海賊で、ナマエは海軍。そうだろ?」 七武海じゃなきゃ、今の海軍大将様が俺のこと許しゃしないだろう。そういわれてしまえばそうなのだが。 「・・・お前、大概頭の中もピンク色だよな。 あと鳥頭。」 「それって今言うことか?どうせお前だってせいせいしてるんだろ?」 おおぅ、なんだこれ。やけくそというよりかは完全に駄目だモードじゃねぇか。なんでこんなネガティブになってるんだ。まぁ七武海辞めるっていうんだから大事か。理由が言えないとか、面倒くさい事になってるみたいだし。少しは慰めてやろうか、どうせ最後にするつもりのようだし。 「ドフラミンゴ。」 「・・・こういう時だけ名前で呼ぶのヤメろ。辛ェ・・・」 「いつものお前らしくないぞ。いつもの高笑いはどうした。」 「フッ、フッ・・・・「駄目だこりゃ。」・・・フ・・・」 空笑い、というかもうやせ我慢にしか聞こえない鳴き声に俺は頭を抱えたくなる。いつもなら飛びつくくらい喜ぶ名前呼びにもこいつはただ泣きそうな顔をするだけだ。肩を抱いてやっても更に泣きそうになるわで、これは俺の手に負えないんじゃないかと思えてきた。 「・・・で、さよならすんの?」 「したくねぇ・・・けど。」 しなきゃ駄目なんだろうな、と呟いてこちらを真剣な顔で向き直った男は、どうせなら笑ってサヨナラしようぜ、なんて泣きそうな顔でいいやがった。 「・・・ばっかじゃねーの?」 「折角、俺がわざわざ決心つけて来たっていうのに手前ェ・・・!!」 「またな、じゃ駄目なのかよ。」 そういうとドフラミンゴはサングラスの中の目を見開いた。実際に七武海辞めたら、本当に俺達は追う者と追われる者の関係で、こんな穏やかに会話なんてできるワケ無いのだろうが。 そうだとしても、サヨナラなんて無粋な言葉を俺は聞きたくなかった。またいつか、もう海で会うことも無いとしても、それでも。俺達が海で生きている限り、いつかまた会うことも有るかもしれないのだから。だから、そんな事を俺に真剣な顔をして言うな。 「コート着てても、俺は俺で。お前はお前だろ。」 たわいなくじゃれていた鬼ごっこから、命がけの鬼ごっこに変わるだけだ。 「何か、変わるか?」 「何も変わらねェ、な。 フフフッ・・・!!」 「というか、俺とお前が海軍と海賊なのは前からだ。」 今までは七武海だからと目を瞑っていた事が多少制限を受けるだけだ。"見つからなきゃ良いだろうが" そう笑ってやれば、ドフラミンゴはサングラスを外しての大笑いだ。上等だ、そう言って笑う彼はもう高笑いと普段の悪い顔を取り戻していた。 「じゃあ最後の逢瀬でも楽しもうか、小鳥ちゃん?」 「・・・お前、"最後"とか矛盾してないか?」 「そうなるかどうかは、お前次第だよ。」 一番の笑顔で言ってやれば、観念したかのように両手を上げた男。 「ナマエには敵わねェな・・・」 「褒め言葉として受け取っておくよ。」 サヨナラは受け付けておりません (あー・・・そういえば、これ要る?) (・・・それ、お前のビブルカード?) (要らないなら、あげないけど。) (馬鹿言え、要るに決まってるだろ、寄越せ!!!) back |