中編:海賊♂ | ナノ


終わりで始まり


宴だ、と船中が湧いている中、ナマエは大体2瓶ほど酒を開けてから退席する。いつものことで俺はそこまでそれを気にしては居なかった。このくらいの歳になってくると深酒は色々とキツイのも重々承知で、まぁサッチは馬鹿だから明日二日酔いになろうが、今日は気にせずエースと飲みふけっている。だいたい俺達とイゾウ、ナマエはそこそこちびちびと話をしながら飲むというのが常だった。まぁ酒がそもそもさほど強くないと昔から言っていた奴だから、いつもなら最後まで飲まなくても話をしているのだが、今日はなぜだか勝手が違うらしい。

「あー・・・疲れたから、先に寝てるわ。」
「わかったが、ベッドで吐くなよぃ・・・・?」

軽口を叩いて、送り出せばイゾウが首を傾げてこちらをみる。

「おい、マルコ。 お前ナマエに何かしたか?」

身に覚えがないとはこの事である。

「本当に体調が悪かったんじゃないのかねぃ?」

あいつが酒に弱いのは知っているし、疲れたといっていたから変に悪酔いしたのだろうと思っていたが、イゾウにはそうは見えなかったらしい。まぁ、手元に残っている酒の量からしてもさほど今日は飲んでいないようだし、立ち去る時の顔色も悪くなかったように思う。(といっても目元は髪の毛で覆われていて見ることは叶わないのだが)

「ふぅん。じゃぁ機嫌でも悪かったかな・・・」
「何でそう言い切れるんだよぃ、」
「だってあいつ気まずい時や嘘吐く時に首元撫でる癖があるんだよ。」

そういえばたまに首元を気にしているような仕草をする時は何度か見た気がする。

「へぇ・・・そうかねぃ・・・?」
「案外裏手でナースと逢い引き、とかだったら笑えるんだけどな。」
「・・・そりゃあ、」

言いかけて、なんと言って良いのかわからなくなった。笑えるな、と返してもなんかしっくり来ない気がした。まぁ俺達くらいになると思春期じゃあるまいし、そこまで困っている訳ではないから イゾウの一言でさえもほとんど冗談交じりなのだろうけれども。 その言葉に、なぜだか酷く動揺した。酒が回っているのかもしれない。

「・・・確かめに行くかぃ?」
「まぁ、嘘ついてまで俺達から離れようとするその原因は気になるわな。」

よし、決まり!と言わんばかりにすっくと立ち上がったイゾウは、悪戯小僧のような顔をしてこちらを見遣る。


終わりで、はじまり


「・・・逢い引きに秘蔵のワインボトル1本。」
「じゃあ俺はそれ以外にワノ国の焼酎1本。」

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