スマイル 0円! いつも見ている道が、いつもとは違って見える。 それを見て、綺麗だなぁ・・・と思いながら自分の足を動かす。 体を動かすのが嫌い私だが、こんな景色が見れるならもう少し続けても良いかもしれない。 それで体重が減るなら願ったりかなったりだ。 流石に走っていると、ジャージを来ていると暑い。(しかも黒だからね、光を吸収しちゃうんだよね。) 手首まであったジャージを肘より上に捲り上げ、私はさらにスピードを上げた。 息がどんどん切れてきて、それに比例して足も重くなる。 しまいには足がガクガクして、歩き始める。(ホントは座り込んでしまいたいが、それは心臓に悪いらしいから、仕方なく、だ。) 「・・・しっ、かし。情け、ないなっ。・・・前はもっ、と、行けたのになっ。」 そう。前は何故だか知らないが、運動部に入っていたのだ。 その時はもっと遠くまで走って行けたのに、1年何もしていないだけで、ここまで落ちているとは思わなかった。 少しショックを受けながら、トボトボと家の方向へと足を進める。 「やっぱりもう少し運動した方がいいかなぁ・・・?」 しかし、このランニング(?)もいつまで続くか解らない。 「本屋とかゲーム屋とか何か、ランニングするような目的つくんないと・・・。ん?」 そう言って、私は周りを見渡した。すると、色の黒いお兄さんが窓からこっちを見ていた。 一瞬そのお兄さんと目があって、すごく爽やかな笑顔をしてくれた。私も笑顔を、と思うが引きつっているに違いない。 嗚呼。こう言うときほど、人と関わるのが苦手な自分を呪ったことはない。 絶対あのお兄さん引いたよ?とか、思っていると。お兄さんが外へ出てきて、こっちへ近づいてきた。 え、何この人。勧誘しに来たの?いい人そうに見えたのに、実はやばい人だったの!? お兄さんが近づく数だけ後退りながら、私は口を開いた。 「な・・・何か用でも?」 すると、お兄さんはにこやかに笑いながら口を開いた。(もうその笑顔すら胡散臭い。) 「がんばっとるなぁ。と思って、はい。」 そう言って渡されたのは、レストランとか喫茶店に出てくるようなおしぼり。 「あ・・・ありがとうございます・・・?」 どっからどう見ても普通のおしぼり。でも、普通走っていた人にわざわざ渡すか? そう思うと、これすらも何か裏があると思ってしまう。 「たまには使ってやらんと、可哀想でなー。久しぶりにこれ作ったら、ちょうど見かけたで、渡したんやけどな?」 ・・・と言うことは、このお兄さんの所は何かお店やってて、久しぶりにおしぼりを作ったときにちょうど私が来たと言うことか・・・? 「・・・そんなんでお店、やっていけるんですか?」 自分的にはそれが本音。と言うか、どうやって生活しているんだこの人。 「えー?本職は薔薇作りやから・・・こっちは副業やんな。」 薔薇作りが本職なのかよ!しかも絶対それって内職って言うよね!? それなら店たたんで、アルバイトとかしたほうが良いと思うんですが。 そんな言葉が口からでかかったが、何とか出なかったようだ。 『ここが俺の店なんやでー?』と言われ、着いていくと。(いや、お兄さんが出た家が店なんだろうけど。) お兄さんが出てきた家に、植物が大半を占めていている看板らしきものがあった。(見にくい・・・。) 「えーっと・・・【喫茶店スペイン】・・・何か良いような悪いような・・・。」 「まぁちょっとよっていきなー。」 珈琲ぐらいなら出せるで。とか言われて。(珈琲好きだけど、飲んだら太るかな・・・?) 取りあえずご厚意に甘えて、カウンターの席に座る。(私的には良い所なんだけどなぁ・・・。) そして、座って30秒ほどしか経っていないだろうか。もう珈琲が目の前にある。 「えーっと・・・。」 「あ、ナマエです。」 「そっか、ナマエちゃん言うの?俺はアントーニョって言うん。」 そう言いながら、目の前で珈琲を美味しそうに飲む。(この人、自分用も作ってたのか・・・。) 「そうそう、ナマエちゃん。それな。最近お客さん来んもんで、インスタントなんやけど・・・良かった?」 え、ちょっと待てよ。インスタント?喫茶店でインスタントが出てくるか?どれだけお客来てないんだよ。 「ごめんなーナマエちゃん。」 そう言って、謝ってくるアントーニョさん。(いや、構わな・・・くはないか。) 別に喉が乾いているから、何でも良いか。とか思って、牛乳と砂糖を入れて一気に体に流し込んだ。 「アントーニョさん。」 珈琲を飲んだ後、私はお兄さんの名前を呼んだ。 「ナマエちゃん。アントーニョでええよ、べつに。」 そんなこと言われても、直す気はないが。「気を付けます。」と言った後、私はこう言った。 「あの、また来ます。」 「え、ナマエちゃん?」 「インスタントじゃない珈琲を飲みたいので。それに・・・。」 私は頬を指で掻きながら小声で。 「お金・・・持ってきてないんで。」 食い逃げみたいで悪いが、初めの予定は走るだけだったので、お金なんて持ってきていない。 そう言うのを聞いたアントーニョさんは別に良いと言うが、自分がいやなのだ。 「まぁ、取りあえずまた来ますので。」 そうゆるゆると話すと、アントーニョさんはにこやかな顔して、「待っとるわー!」と言った。 目的地を見つけました 次の日、私はお金を持って走り出した。 もしかしたら、お金が無くなっても自分は行くんじゃないかとか思ったりする。 確かに、お金払わないといけないとか。そう言うのはあるけれど。 多分あそこに行く理由は・・・よく分からないけれど、あの笑顔を見に行きたいからだと思う。 私は走る速度を速めて、目的地へと急いだ。 そして、植物に隠れた看板(?)を見つけると、私はゆっくりとそこの入り口を開けてこういった。 「こんにちはー。」 (貴方の笑顔を見に来ました。) back |