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蟻には砂糖、貴方には?


「あれ。」
ライモンシティ近くに新しく設立されたショッピングモール。
そこで普段見かけない人を見かけた。
込み合う人混みの中に目立つ白と黒のコート。
なにやら目を輝かせて2人とも子供のようにお店の紹介等雑誌を広げている。

「あれ、お二人とも。地上に出てるなんて珍しい。」
「おや、ナマエ様。お久しぶりです。」
「やっほー!ナマエ!! お久しぶりー!!」

声をかけた瞬間にふたりともこちらに小急ぎで駆け寄る。
白コートのクダリさんに至っては腕をばたばたさせるようにしながら走ってくる。
その後ろから黒コートを翻しながら小走りでノボリさんが駆け寄る。

「お二人が居るということは、今日は地下鉄はお休みですかね?」
「いいえ、トレインは通常運転しております。」
「ボク達は今日はなんか労働基準法とかで強制休暇ー!」
「・・・と言う訳なので、まぁ近くに高名なショッピングモールがあるときいて視察に。」
「でも、ボク知ってる。この雑誌買ってうかれてたの、ノボリ!!もちろんボクも楽しみ!!」

にっこりとノボリの事をばらすクダリにノボリはあたふたとしながら、帽子を目深に被り直す。
その時に見えた耳が真っ赤で、お恥ずかしい・・・とセリフが聞こえた事もあり、つい微笑んでしまう。
彼等の言葉を当てはめるとしたら(なんて可愛らしい、ブラボー!)といった感じである。

「ここにはよく来るの?」
「えーっと・・・僕さ、実はこのアベニューのプロデュースしてるんだよね・・・」
ノボリさんの手から雑誌を取り上げて、アベニューの紹介該当ページを捲り突きつける。
「そう、これこれ。」
紹介ページに顔写真が1つと、それらしい文字いくつも踊る。
それを見せた瞬間ノボリさんがいきなり目を輝かせ、大声を上げる。
「ブ・・・ブラボー!!!! スーパーブラボーでございます!!!」
「ちょっ・・・ノボリ!目立ってる!!」
奇声に気付けば、店の従業員やお客などはこぞってこちらを見ていた。
それにちょっと恥ずかしくなったのか、固まってしまったノボリの手を2人で繋いで走る。
目的地はもちろん自分のオフィスである。あそこなら関係者以外は立ち入れない。

「ナマエさん、どうしたんですか?いきなり慌てて。」
秘書の何人かが多少焦って入ってきた自分たちをみて言う。
「ちょっと人目集めちゃったみたいで。」
「・・・またファンに囲まれましたか。とりあえずお茶菓子とお茶持ってきますね。」
「・・・ありがと。さ、ノボリさんもクダリさんもちょっとほとぼり覚めるまでここでお茶でもどうぞ。」

椅子を引いて促せば白と黒はゆっくりと椅子に腰掛けた。
「誠に申し訳有りません・・・少しはしゃぎすぎてしまいました。」
「大丈夫!ノボリ熱くなるといっつもそう!通常運転!」
「それは大丈夫とはいいませんよ、クダリ。」
「でもお二人時間大丈夫ですか?折角の休暇時間を邪魔してしまって逆に申し訳ない。」
「いえいえ、ぶらっと見て回るつもりだったのでこれといって目的地などないのです。」
「逆を言えば全部回りたい!って事!!」
「了解しました。それじゃあ、少し経ってからご案内しますよ。」
「よろしいのですか?!」
「ええ、値引き制度はないのであれなんですけど・・・」

それでもいいかな、と問えばノボリさんは顔を赤くして首を縦に何度も振る。
むしろこんな可愛い人と一緒に街を回れるならこちらとしても願ったり叶ったりだ。
ボクもいるんだけどな!と声を張り上げるクダリさんにも勿論ですと笑いかける。

カップのお茶も大体無くなった頃、ようやく世間話も一段落したので外をみやれば大体お昼時。
「まずはレストランからでいいですか?今日一日で全部回るのはちょっと難しいかな・・・?」
「楽しみです。確かここの大体の施設がポケモン同伴でもよかったと聞きますので・・・!」
「まぁ回りきれなくても近いから、また来るしね!!」
「・・・ええ、流石ナマエ様です。こんな素晴らしい廃人施設でしたら毎週でも来たいです・・・!!」
「うん、大体あってるけどなんか喜べない・・・!!」


太陽の下に釣り出す為の餌

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