ショート | ナノ
プロムナードの途中にて


子供の楽しそうな声が聞こえる中、私はゆっくり息を吐いて、瞑っていた目を開く。
目に見えるのは青と、そこに絵の具のように散らされた白色。そしてたまに小さく音を鳴らす緑。
木陰に寝ころんで伸びをする私の頭には、のどか、落ち着く。今はそう言う単語しか出てこない。
何故か嬉しくなっているのを感じながらまた目を瞑ると、「ナマエ・・・居らんと思ったら、こんな所で寝とったんか。」と、聞き覚えのある声がした。

名前を呼ばれたので目を開けようとすると、何かがかけられた感触がした。
「・・・緑・・・ふく?」
「あ、起こしてまったか?」
不思議に思って身体を起こしてみると、横にはクラウドさん。そして上に載っていたのは、鉄道員さんが着ている上着。
「寝てたわけじゃないんで、大丈夫ですよ。」
「ふぅん、そうか。ってナマエ整備の仕事は・・・!・・・もしかして・・・サボり、か?」
「今日はお休みなんです。」
そう返事をすれば「へぇ。」と、どうやら納得はしてくれたらしい。それを確認して、また私は地面に全体重を預けた。
ぽつりぽつりと会話をしていけば、今、クラウドさんは休憩時間らしい。(気晴らしに外に散歩しに来たらしい。)
外に出てくる暇があるなら、地下の休憩室で休憩してたらいいのに。と思ったとき、ぶわりと大きく風が吹き込んできた。
音を立てて緑が揺れ、耐えきれなかった緑の一部分が風に乗ってどこかへ飛んで、流れていく。
その瞬間がとても綺麗で、思わず見入ってしまった。

そうしていると、ふと、隣の視線がこちらに向かっていることに気が付く。
目だけで見てみると、こちらをじっと見ているのが分かる。
「・・・あの、クラウドさん?」
「ん、何。」
そう聞かれたので、何でこっちを凝視してるんですか、と素っ気なく言ってみるも、効果はいまひとつのようだ・・・。
穏やかに笑いながら、こちらをまだ見てくる。
「クラウドさん。だから、何「ナマエ。」
名前を呼ばれて見れば、私の方に伸ばされる右手。それを見た瞬間、私は反射的に目を閉じてしまう。
「・・・・・・・・・ほい。ナマエ、取れた。」
「・・・はい?」
そう言われて目を開けてみると、笑っているクラウドさんの手には葉っぱ。どうやら頭に付いていたらしい。
「そうならそうと言って下さいよ・・・。」
「何というか・・・ナマエは可愛ええなぁ。」
「かわっ・・・!あのっ、からかわないで頂けますか!?」
ガバリと起きあがってそう抗議してみても、やっぱり効果はいまひとつのようで。嬉しそうな顔をしながら、頭をわしゃわしゃ撫でられる。
「・・・・・・セットが乱れました。」
頭を撫でる攻撃から逃げるために、そう呟いてまた寝ころぶ。
「寝ころんだ時点で髪の毛のセットなんて関係無いやろ。」
「うっ・・・・・・。」
痛いところを突っ込まれてしまった私には、何も反論が出来ず。身体の上にある彼の上着を肩まで引き上げて、そっぽを向くことしかできなかった。


プロムナードの途中にて
 

「ナマエ、ナマエ。」
「・・・・・・。」
無言を貫いてやろうと思っていたのだけれど、わし、もうそろそろ帰らんと。と言われてしまい、起きあがって渋々上着を返す。
「すまんなぁ・・・・お?ナマエ、ちょっと待ち。」
そう言ってまた伸びてくる手。どうせまた葉っぱか何かだろう、今度は目を瞑ってやるもんか。
決意をしてみるも、手が髪に触った辺りから視線は真っ直ぐからだんだん下の方へと下がってしまう。
「・・・ホント、可愛ええな。」
クラウドさんがそう低く呟いた後、髪を触っている方じゃない手が私の頬を撫でる。これはおかしい。そう思った瞬間顔を上げる。
顔を上げなければ良かった。そう後悔しても遅く、視界に広がったのは。

緑と・・・これ以上は言いたくない。
「・・・さっさと仕事に戻れ、ばかやろー・・・。」
クラウドさんに対して、手を口に当て、ギロリと睨みをきかせながらそう言い放つ。
「・・・・・・っ。」
睨みにひるんで、さっさと仕事に戻ればいい。そう思ったのに。

(・・・あかん。帰りたくなくなった。ナマエと一緒にさぼりたい。)
(地下に帰れ!そして、私は今日休みです!!)
(ナマエも地下行くなら・・・ええよ?)
(ちょっと!疑問で聞いてる割に何で私を引っ張ってんですか!!離して下さいー!!!)

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