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小さな企み、大きな代償


4月1日。
悪戯好きなひと達が溢れかえるある意味嫌なイベントです。見知った人が周りの人を必死に騙そうと画策する。中には凄い考えをする人や、嘘が付けない人も居るわけで。


まったくもって計算外。小十郎さんの巧妙な言葉に騙されて、奥州を飛び出したはいいものの。どこからか情報を手に入れてきた佐助に騙されてしまい、すこし自棄になっていた。 なにか自分だけ騙されているのもしゃくなので、誰か簡単にだませそうな人は・・・・。

「あ、幸村。」
純粋な幸村を騙すのはなんか心が痛むけど、一回人生という荒波にのまれるのも経験しないと!!

「おぉ、名前殿。奥州から来られたのか?」
鍛錬を終えてからすぐだったのだろう、汗だくになりながら佐助を呼ぶ。
「さーすー・・・むぐっ!!如何なされた、名前殿!!」
出来れば佐助には会いたくない。だって佐助が来てしまったらいろいろばれてしまいそうだ。実を言うとそんなに自分も嘘をつくのは得意ではないのだから。

「しーっ、幸村!佐助なんて呼んだら聞かれちゃうでしょ!」
「何を・・・でござろう?」
苦し紛れについた嘘にしどろもどろになりつつもそのまま話を続ける。

「内緒の話・・・!!佐助が来るんだったら話せないけど、それでもいいの?」
「な・・・内緒の話・・・なんか格好良いでござるっ!!」
そういいながら幸村はキラキラした目でこっちを見てくる。 犬の耳としっぽがみえる・・・なんて思いながら幸村の耳の近くでこそこそ小声で話す。

「実は・・・私・・・幸村のことが・・・・・・・・」
「・・・小さすぎてなんて言っているのか解らないでござる!!」
「だから・・・私・・・幸村のことが・・・・・・・・」

ぼそぼそと話していて、幸村が油断しきった所で近くにある幸村の耳に息を吹きかける。

「うわあぁあぁああああ!!!!なんと破廉恥な!!」
さっきまで話していた耳を両手で塞いで、顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせている。
「幸村ー・・・今日は何の日だー?」
「・・・・・・?」
よく意味すら解ってないのか、真っ赤な顔のままで首を傾げてくる。

「今日はねー4月1日。エイプリールフールなのだよ、幸村君。」
佐助から聞いてないのかな・・・?
「今日はね、嘘をついたり悪戯しても許されてしまう日なのだよ!」

自信満々にそのことを幸村に言ってみたのだが、幸村からのアクションは無し。
あれ、どうしちゃったんだろう・・・? びっくりしすぎて失神とかしてるんだろうか?

「え、あ、ちょっ・・・幸村?」
ぐらり、と崩れる幸村の体を支えてみるが、異様に重い。とりあえず引きずって木の所にでも横にしておこうと引きずっている途中。後ろからなにやら引力が発生し、その場に自分も倒れ込んだ。

「っ・・・地味に痛い・・・。」
起きあがろうとした時に見えたのは先ほどまでの彼ではなく。意識もはっきりした様子で笑って私の着物の裾を握りしめる彼。

「え・・・私、何か覚醒させちゃった・・・・?」
「名前殿、今日は悪戯しても、嘘をついても良い日だと言っておられたな・・・?」
いつもと同じ声で、いつもと同じ口調なのになぜかその一言が無性に怖い。そもそも、いつもとは違う黒い笑みがそれを予感させる。

「ゆ・・・幸村! 落ち着いて、ね?」
幸村は私の問いには答えずにっこりと笑う。こんな所にも伏兵がいるなんて計算していない。


油断は禁物

 
(ごめんなさいぃ〜!!許して幸村ー!!)
(某は怒ってなどおらぬ、名前殿?)



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