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日本人なら、


英語と言うだけで何故か洒落た言葉に聞こえる。でも何故か、その言葉が妙に寂しく聞こえるのは気のせい?英語の意味がまったく解らない訳じゃない。でも、日本人だからこそ。貴方の、貴方の言葉が欲しいと思うのは欲張りなのだろうか

「Hey、Honey! お出かけかい?」
気が付くといつも近くにいる上司。毎回毎回、良くも飽きずにと思っていたがそろそろもう慣れた。

「一応、これも仕事なので。貴方も職務だってあるでしょ?」
返答だってもうお手の物。半分は小十郎さんからの受け売りだったのだが。だがその言葉に彼が息を詰まらせたのには理由があるのだろう。

「どうせ今日もサボってるんでしょう?そんなので良く殿様が勤まりますね・・・。」
「名前、そりゃあ俺が立派だからだろう?」
少しも悪びれる様子もなく彼は即答した。その答えに多少予想はしていたものの、やはり言われると呆れてしまうのは仕方ないことで。そうしていると、政宗の後方から小十郎が息を切らして追いかけてきた。

「政宗様、今日こそは逃がしませんぞ!!」
「ったく、頭が固いなぁ、小十郎?」
腕を組んで偉そうに言い張る政宗にさすがの小十郎も苛々してきている。でもそこはいつも傍に居る小十郎ならではの切り返しである。

「毎回、毎回、貴方という人h「解った、解ったから!!」
この後、政宗が止めていなければ小言が凄い勢いで長々と語られていただろう。
「解って頂けましたか、政宗様?それならば急ぎの仕事があるのでこちらに・・・」
「解った・・・じゃぁ名前、午後までには終わらせるから、午後までにお前も仕事終わらせておけよ?」
「えー・・・殿様と違って暇ではないもので。」
皮肉のつもりで言ったのだが政宗には全然効化がないようだ。

「奥州では俺がルールだ、Do you understand ?」
「何を言っているか解りません。」
何しろ奥州の民全員が英語を理解できるているわけではない。大抵の人達はノリとテンションのみで理解しているような気になっているだけだ。

「あー・・・”わかったか?”」
「だから、解りません。」
政宗は英語の訳を言ったつもりだったのだが、名前には「英語の意味が理解出来るか?」という皮肉にしか取れなかった。

「いっそのこと軍神さんみたいに全部平仮名で話された方がよっぽど理解できます。」
そう言い切った名前に小十郎が笑いを堪えながら諭す。
「それは政宗様が可哀想になるから、そう言うのはやめてやってくれ。」
「Ok,honey がそう言うのならhoney の前では平仮名で話すことにするぜ?」
小十郎の言葉を遮るか遮らないかのギリギリの所で政宗が口を出す。

「人の話を聞いてなかったようですね・・・」
小十郎はもう諦めたのか、少し項垂れながら政宗を無理矢理引きずっていく。
「honey!午後の約束は絶対だからな!!」
「はい、はい。」


引きずられていった上司を見送ってから、城下町に買いに行くと、見知った顔から声をかけられた。前田慶次。片倉さんの畑を荒らした前田家の一員で、あまり奥州の人はいい顔をしない。
「おっ、名前ちゃんじゃん!」
「あー・・・また来てるよ、疫病神。」
顔をしかめて嫌そうな顔をしてみたけれど、彼には通用しないみたいだ。
「ひでぇなー!名前ちゃんに会いに来たのに。」
「来なくて良いです。」
即答すると慶次は軽く笑いながらもう一度「ひどい」と言った。

「相変わらずテンション低いねー・・・!!」
「・・・貴方もですか」
すこし英語に過敏になっているのかもしれない。
「ん、何が?」
「人が解らないような言葉なんか使ってんじゃねぇー!!」


日本人なら日本語を話せ!


英語を喋るのは外国人だ!


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