過剰反応・被害妄想・自意識過剰 「何だかなー」 2人だけの空間、その上には青い空がずっと先の方まで続いていた。授業が始まっていて誰もいないはずの屋上に二人。 そこから見下ろす校庭には真面目に体育の授業に取り組んでいる生徒達の姿が見える。 「つまんねぇ声出しやがって、どうしたよぉ!」 「・・・つまんなくない声って何よ。」 「うーん、エロ声。」 いつもと同じ口調で簡単に言ってのける俺に、いつも通り返してくる。 「チカちゃん、あんたねー・・・私にそれ期待しちゃ駄目だとおもうよ。」 そうかぁ?なんてふざけながら行って来る俺に名前は笑顔で返しながら、話し続ける。 「本当に嫌になっちゃう。自分がこんなに弱いなんて思わなかったんだよ。」 「名前、それってよぉ、政宗に関係ある事か?」 彼女は以前から政宗に告白しようとして、相談を俺に持ちかけてきていた。そういえば行動に移すと言っていた日から数日経っているが、噂好きの猿飛からその話題は聞いてない。浮かない顔をしている所から見ても成功しているとは考えにくかった。 「振られたのか・・・?」 真面目に聞いたつもりだったのに名前は笑っていた。 「告白は、したけどね」 屋上の柵に背を預けながら彼女は笑った。 「振られるのが怖くて逃げて来ちゃったよ、やっぱり駄目だねぇ」 その笑顔が泣いている様に聞こえて、あやふやに空を見るのを止めて彼女のほうを見る。 「そんなこと無いと思うぜ、俺は。」 彼女は泣いてはいなかったけれど、もう少しで泣きそうな顔をしていた。 「ごめんね、せっかく応援してくれてたのに。」 「言えただけでも立派じゃねぇか、言葉にも出来ない奴もいるしな。」 それが自分、なんて言えるはずもない。体の肉付きも小さいときのそれとは違って来ているのに、心はまだ姫とからかわれた時のままだ。情けない、と自分でも思っているのだが、こればかりはどうしようもない。 「チカちゃんにしておけば良かったなー、そうしたらこんなに悩まなくて良かったのに。」 それは政宗の代わりって事か?でもそれでも良い、と思ってしまう自分が重傷だ。言葉の綾だということも解らなくなりつつある自分はやはり馬鹿らしい。 「それにね、なんてゆうか前は政宗のこと、凄く好きだったんだけど。」 「名前、どういう意味だ?」 それは期待してもいいって事なのか? 「政宗見てても、ときめかなくなっちゃってて。私って都合良いよねぇ〜」 彼女の目に溜まっていた涙がボロボロと零れた。慰めるため、なんて理由を付けないと抱きしめることすら出来ない自分が歯がゆい。 表だって好きだなんて言う勇気が俺にはないから。今、この瞬間に少しでも俺の気持ちが彼女に伝わったらいい。 「チカ、ちゃん? 怒った?」 抱きしめる力を知らずに強めていたらしく、彼女には怒っているように感じられたようだった。 それに気が付いて慌てて腕の力を緩める。 「怒ってなんかねぇよ。」 「あれ・・・チカちゃん、泣いてる。私のせい・・・だよね?」 そう言われて頬に手をやるとなぜだかしめった感触があった。彼女は悪くない。悪いのは、狡かったのは俺だ。名前との繋がりを無くしたくないから、と言って良い人ぶって。 応援するなんて言って、誰にも名前を捕られたくないと思っていた。 「今更、私に好きだなんて言われても困っちゃうよね・・・」 俺が進むことをためらった道を彼女は一足飛びで越えてくる。 「お前な・・・今更、なんて言うなよ。まだ俺は何も言ってないだろ?」 恥ずかしがって逃げられてしまっては政宗の二の舞だ。先ほどまでゆるめていた腕に少しだけ力を入れて彼女を拘束する。 「え・・・・元親・・・?」 ありったけの勇気を彼女が先に注いでくれたから。今なら言える気がした。 「お前が思ってるより前から、俺はお前しか見てなかった。」 腕の中の彼女だけに聞こえるように耳打ちで続ける。 「もう二度と離すつもりはねぇから覚悟しな?」 腕の中の彼女の耳が真っ赤になるのが見えた。 上手く伝えられない 〈元親、顔が真っ赤だよ?〉 (う、うるせぇ!お前だって・・・!!) back |