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前より盾より


「しっかし、いつ見ても見事だ。」
そう呟く後ろで、私を呼ぶ声がする。
「名前、何が見事なんだ。」 
私は振り返ると、緑の妖s・・・・いや、元就がいた。(一応城主だ。) 
「あぁ、元就か。・・・もうそろそろ時間か?」 
「いや、まだだ。相手が出るのを持つ。」
そう呟いた元就。(そんなことを言っていると、アンタの首が取られるよ?) 
「こんな事を言ってなんだけれど。」
「・・・申せ、名前。」
「戦って気がしないね。」
「アホか貴様は。」

「元就、アホって言う方がアホって事知っている?」
「・・・それは幼い考え方だ。」
そう言って、ため息をもらした元就。(酷いね。) 
「じゃぁ、元就はどう考える?」

何がだ。と言わんばかりの顔をして、こっちを見る元就。元就に仕えている人は、元就のことを『血も涙もない奴』とか言っていたが、私はそう思わなかったりする。人の話をちゃんと聞く奴だし。(例え、それが元就曰く、くだらない話だとしてもだ。)他にも、植物を愛で・・・なんか視線が痛いのでやめておこう。 まぁ、『血も涙もない奴』がしないことをしているから。(ただの偏見だったとしても。) だからこうやって、たまに元就の所で働いていたりする。

ふと、声がした。
「名前。貴様・・・人が聞いているのに何も話さないとはどういうことだ。」
「・・・ふぇっ!?」
いきなり現実に戻される。(元就は眉間にしわを寄せている。)あぁ。しまったと思いながら、言いたかったことを口に出す。 

「いや。その『幼い考えを持った駒』に守られているアンタはどうなるんだと思って。」
「その答は簡単だ。」
そう言った元就の言葉は、私にとって傷つく言葉だった。
「名前。貴様は我の駒ではない。」
一瞬、私は固まった。(元就のその言葉によって。)
そりゃぁ、私は雇われだし、アンタの部下ではないけれど。悲しかった。なぜだか知らないが、自分を否定された気がした。それに続いて、元就はこう言った。

「貴様を駒として見ていない。」 
ようは、なんでもない人だったのだ。
「そう、だったの。」
誰にともなく私は呟いて、去ろうとした。 
すると、 「名前。何処へ行く?」 そう聞いてくる元就。(ごめんね。もうアンタをまっすぐ見れないや。)

私は、元就を見ないようにしながら、尋ねた。何故そんなことを聞くの?と。
「まだ我は、言いたいことがある。」
あぁ、もう何も聞きたくはない。そう思いながら、なんですか?と聞いた。

「名前、貴様は駒だとは思いたくはない。」
「そうですか。・・・って、はい!?」
本気で?と聞きたい反面、じゃぁ、何なのだと聞きたかった。
そんな思いが届いたのか、元就が話し出した。

「長曽我部と戦って、分かった。」
「長曽我部・・・あぁ、私が元就を庇って怪我をした、あの戦のことかい?」

最終的には、同盟という形で終わったあの戦。 
あの時、私は元就の所へいて、庇って怪我をしたあの戦。
元就は、苦しそうな顔をしながら、話を続ける。

「あぁ、あの時。人がいなくなる怖さを知った。名前・・・。我の所へ来ぬか?」
「は!?」

いきなりの展開に、ついていけない私を無視してこう言った。
「我の盾として前へ出る事は許さぬ。我の横に・・・ずっといろ。」
私はそれに、何も言わず頷いた。 


ずっと僕の傍らで
 

「でもそれは、これが終わってからでしょ?」
「名前。我を侮るでない。」
そう言って、ニヤリと笑う元就。
「このような戦、すぐに終わらせてやる。」
そう言う元就に、私もつられてニヤリと笑う。

「あ、そうだ。」
「名前。どうかしたか?」
「チカちゃんは呼ぶ?」
「あやつか・・・。」
そう言って、渋る元就。
「名前に変な虫が付くのはすかんな。」
「・・・それはどうも。」

遠くで法螺貝の音が聞こえる。
「いくぞ、名前。」
「了解です。」
そう言って、元就の後を追った。



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