積もり積もりて、 目が覚めて、窓を開けてみると。 「うわぁっ!!」 辺りは一面真っ白でした。 「・・・どうした名前。こんな朝っぱらから。」 私が感動していると、小十郎さんが後ろから声をかけてきた。 「あ、おはようございます。」 「おう。・・・って、名前。人の言葉を無視するな。」 「あ、ばれました?」 そう言って、私は苦笑いをする。 「子供っぽいって、言わないでくださいね?」 私がそう言うと、今度は小十郎さんが苦笑いをする番だ。 「名前、その点は大丈夫だ。政宗様の方が名前よりも子供っぽいからな。」 ・・・それって言って良いのかなぁ?とか思いながら、私はもう一度聞いた。 「本当ですか?」 「名前・・・お前、結構疑り深いな。」 小十郎さんはそう呟きながら、こちらを見て笑う。 私はその動作を見ながら、思ったことを口に出した。 「その場合・・・小十郎さんも、だと思うんですが。まぁ、良いですけど。」 どうせ違うとか言われるのが目に見えている。 (私から見たら、小十郎さんの方が疑り深いと思うんですが。) そう言えば、小十郎さんに何か聞かれていたのを思い出したので、その答えを呟いた。 「雪が降って、積もってたんで。・・・綺麗だなぁって、思って。雪だるま作って飾っただけです。」 私が淡々と話すと、小十郎さんはだんだん笑いをこらえるような顔を濃くしていくのがわかった。 「・・・小十郎さん?」 「んっ・・・・・な、何だ名前?」 「笑いたければ、笑えばいいじゃないですか。別にこらえなくても良いですよ。」 「名前・・・違う、誤解だ!・・・少しかわいらしいと思っただけだ。」 「・・・・はい。わかりました。子供っぽいって言いたいんですね。」 私はそう呟きながら、冷え切った廊下を歩いていく。 そうすると、後ろから小十郎さんが私の手をつかもうと、小走りで近づいてくる。 ふと、小十郎さんの近くにおいてあったあるものに目がいった。 「ちょっ、小十郎さん止まって!・・・・・・・・・・・。」 「?どうした名前?」 凄く不思議そうな顔をしていた小十郎さんは、下を見たとたん『あ。』と呟いた。 小十郎さんの足下には、雪があったと思われる水滴がちょこんとついていて。 少し遠くに体の一部と思われる物質が落ちていて。 私の作った雪だるまは、少しバラバラになりながら、白い絨毯の中へと吸い込まれて消えてしまっていた。 「名前・・・その、なんか。すまん。」 「いえ、廊下へ飾っていた私も悪いんで。」 「いや、名前は名前なりに楽しもうと思ってやったのを、俺は壊してしまったからな・・・。名前、すまん。」 そう謝る小十郎さんをみて、私は焦りながら話し出す。 「いえいえいえ。どうせ、作り直せば良いんです。」 どうせ、まだみんな起きてこないんで。もう一度作り直します。と、にこやかに笑いながら言うと。 「・・・名前。」 何かを考えていた小十郎さんが、雪の上に降りた私を呼ぶ。 「何ですか?」 「名前は、俺が居たら邪魔か?」 「・・・はい!?」 いきなり何を言い出すんだ、と思っていると。小十郎さんはその理由を話し始める。 「名前の雪だるまを壊しちまったんだから、名前に何か悪いと思ってな・・・。」 そう言う小十郎さんに、私は『良い・・・ですよ?』と答える。 実際、一人で雪景色の中にいると、少し心寂しかったこともある。私は少し迷いながらも、頷いた。 「名前、どうだ。大きいだろう!!」 ふと見ると、屋根の雪が前よりもたくさん積もっていた。 そして、庭の雪を集めて大きな雪だるまを3つ作っていた。(主に小十郎さんが。) 凄く何かをやり遂げたかのように、こっちを見る。(実は雪だるま作るの好きだったりして・・・。) 「・・・結構作れましたね。」 「久しぶりにこんなの作ったな。・・・政宗様が小さいとき以来だ。」 楽しかったですか?と聞くと、結構な。と、少し照れながら答えてくれた。 「今度はかまくらでも作りましょうよ。こんなに雪が多いんですし。」 「名前が隣で手伝ってくれるんだったらな。」 「あ、はい。風邪ひかないように気をつけます。」 そう言ってガッツポ−ズをすると、小十郎さんは苦笑しながら『ああ、よろしく。』と言った。 「それじゃぁ、名前。もうそろそろ部屋へ戻るか。」 そう言って、差しのばされた手を掴んだ。 雪を触っていたので、とても冷たかったけれど。わたしにはあったかく感じられた。 全てが積もっていく。 「あの様子だと、絶対わかっていないな。」 雪の降るのを見ながら、廊下を2人で歩いているとき、小十郎さんが呟いた。 その言葉は、私の耳に聞こえる前に、静かだった人たちの声でかき消されてしまった。 さっきまでの事は夢のようだった気がしたけれど。 (左手にはまだあの感触が残っている。) ゆきやこんこ あられやこんこ 夢のようなさっきの出来事も、目に見えるように積もってくれればいい。 back |