ショート | ナノ
秋は味覚から!


暑かった日差しもだんだん弱くなり、朝は涼しくなった来た今日この頃。 
控えていた外出も日が経つにつれて、回数が多くなってきた。
「今日は、久しぶりにおしゃれこうべさんの所へ行こうと思ったのだけれども・・・。」
窓の外を見ると薄暗い雲が空を覆い、ぱらぱらと雨が降っている。
こんな日は、外に出かけたくないというのが本音だ。(足元がぬれるから。)
「でも、何かしたい気分なんだよなぁ・・・。・・・あ。そうだ!!」
私はあることを思いついて、キッチンへと向かった。
向かったキッチンの片隅には、カボチャが待ってましたと言わんばかりに佇んでいた。
 
秋は味覚から!!

お砂糖、牛乳。甘いもの(材料)をいっぱい(分量分に)。
「そうすると、美味しい普通のプリンができる・・・・はずだった。」
私は、のんびりとそう呟きながらカボチャを裏ごしする。
「だけど、ナマエは余計なものまで入れちゃった。(余計じゃないけど。)」 
それは・・・。
「カボチャX。」
自分で何を言っているのか分からなかったので、その後は歌を歌いながら作業を続けた。
作っているものはというと・・・。
「カボチャXを入れるという事は、カボチャプリンしかないでしょう!!」 
せっかくの秋なんだ。秋の味覚を使わないのは勿体無い。
「さてさて・・・後は焼くだけ♪」
そう呟きながら、オーブンへとプリンたちを投入した。
美味しく出来ますようにと祈りながら。

プリンたちを蒸し焼きにして、20分ほど経った。
オーブンが役目を終えた合図を知らせるころには、部屋がなんともいえない甘い香りに包まれていた。
「あぁ・・・いい匂い。きちんと焼けたかな?」
私は急いでオーブンをあけると、美味しそうなカボチャプリンの匂いが広がった。
まだ型から開けてないけれど、上から見えるプリンの色は秋を思わせる何とも言えない色をしている。
「成功・・・かな?」
「うん、成功なんじゃない?美味しそうだよ、ナマエ。」
「久しぶりにカボチャプリンなんて作りましたよー。」
「ふーん。ナマエは他に何を作った事があるの?」
「えーっとですねぇ。ケーキでしょ、アイス、パイあと・・・って誰!?」
「ナマエ。僕だよ、僕。」
それを聞いて、私は後ろを向いた。 
「レ・・・レムレス!」
「やぁ、ナマエ。流石、紅蓮の魔導師。火の扱いが見事だ。」
紅蓮の魔導師だから、火の扱いが上手いと言う事ではない気がするけれど・・・。
「・・・というか、今思ったんですが。どこから入っているんですか。」
「んー?それは・・・窓から、かな?」
そうなのだ。レムレスが立っているところは、キッチンの窓だったのだ。(開けていた私も悪いが。)
「・・・不法侵入で訴えても良いんですよ?」
「いやだなぁ、僕とナマエの仲じゃないか。」
・・・レムレスさん。それはどんな仲ですか?(そんな事言っていると、私はフェーリに呪われる・・・。)
「美味しいお菓子があるところなら、僕はどこへだって飛んでくるよ。」
「本当にやりそうだから怖いよ・・・。」
「え?僕は冗談は言わないはずだけど。・・・というか、早く食べようよそれ。」
レムレスは待ちきれない感じで、プリンに手を伸ばす。
その様子を見た私は、呆れながらこう言った。
「・・・フォークはそこの棚だから、適当に取りなよ。」
「え?それって食べていいの・・・?」
「プリンを持って言う台詞じゃないと思いますよ。食べたくないならいいですけど。」
そう言って、私はコーヒーの準備にとりかかった。
今日のおやつは、賑やかになりそうだ。
私はそう思いながら、笑った。

時計が三つ時を数えて少し経ったころ、ようやくコーヒーが出来上がった。
「ナマエ遅いよ。でもまぁ・・・仕方がないのかな?」
「コーヒー作ってたんだ。それぐらいは許してくれてもいいんじゃない?」
ぶっきらぼうに言いながら、コトンと言う音をさせながら、コーヒーを机に置いた。
「うん、ナマエだしね。許してあげるよ。」
「・・・何その上から目線。ここ私の家だよ?プリンを作ったの私だよ?」
「僕と君の仲だろ?」
だからそう言うことを言うと、フェーリに呪われるんだって。
あまり会わないけれど。(3ヶ月に一回会えれば珍しい。)嫌われてはいない・・・と思う。 
「レムレスと私の仲は・・・友達じゃないのか?」
「んー。ナマエがそう言うなら・・・今はそう言うことに、しておこうかな?」
プリンを食べながら、そう言うレムレス。
そう言うレムレスが、怪しい笑顔をしていたので、どういう仲なのだろうか考える。
・・・やっぱり、被害者(私)と加害者(レムレス)かなぁ・・・。
いろいろ考えていると、レムレスがこっちへ近づいてきた。
「・・・ナマエ。今、変なこと考えたでしょ?」
「・・・い・・・いやぁ、そんな事考えてないよ!!」
誰もストーカーとか、変態とか言ってないからね!?
そう思いながら言い訳していると、向こうも納得してくれた。(多分) 
「じゃあさ。プリン食べたら、一緒に運動しに行こうか。」
「・・・外に行くのか?」
「ん?それは当たり前じゃないか。」
ナマエ、ビ●ー持ってないだろ?と、レムレスは聞いた。
お前の室内の運動イメージはあれか。あれなのか!?
他にだってあるだろう、ヨガとか・・・。
・・・考えたが、少し馬鹿らしくなってきた。
「と言うか、外は晴れてないだろう?雨降ってたし。」
「えー?僕が魔法で晴れさせたよ。」
「・・・嘘でしょう。」
「うん、それは嘘だけど。」
私はやっぱりか・・・。とおもったが、彼はその後こう続けた。
「でも、晴れてるよ。絶対。」
「・・・どこから、その自信は来るんですかね?」
呆れている私と窓とを交互に見ながら言った。(すごくにこやかな顔をして。)
「窓の外、見てみなよ。」
そう言われて窓を開けると、そこは。


青空が広がっていた


「晴れましたね。」
「え、前から晴れてたよ?」
「・・・何時からですか。」
「んー。僕がナマエの部屋に来たときには、もう晴れてたかな。」
「・・・・・・・・・・・・。(それを先に言えよ。)」 


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