ショート | ナノ
白と黒の珈琲事情


「うーあーうー。駄目だ・・・ナマエさんはもう駄目だ。」 
バタリと机に伏せると、ふと見えた時計の時刻は。
「3時・・・。」
じーっと時計を見た後、私は頷いて立ち上がった。
「カフェオーレでも飲もう。3時のおやつで糖分補給すれば、頭も活性化する!!・・・はず。」
そう言って、台所へと急いだ。
たまには息抜きも必要だろ!!
 
白と黒の

水を沸騰させる間、買って置いたコーヒー豆をひく。
そして。
「ナマエさんが作った、アイスボックスクッキー!!」
ここで効果音が鳴らなかったのが少し悲しかったが、取りあえずオーブンにいれて焼く事に。 
「おやつはこれでOKだから・・・後はオーレさんだね。」
そう言って、火をかけている片手鍋を見る。
「まだ沸騰してない・・・。でも、クッキー焼けるの12分後だしなぁ・・・。」
仕方がないとわかっていても、心のどこかで魔法使えば・・・とか考えている自分がいる。
「・・・紅蓮の魔導師だから、火の扱いは大丈夫だと思うけれど・・・。」 
それをやったら、何かが終わる気がする。でも・・・。
ふと気づくと結構時間が経っていたらしく、鍋の中の水が沸騰していた。

クッキーやカフェオーレができあがった時には、時計は3時15分を指していた。
「はぁー。間に合った間に合った。(多少魔法を使ったところはあるけれど。)」
クッキーもカフェオーレも2人前ほど作っておくのが、自分流。(何かやっているときに、すぐに飲み食べ出来るから。) 
「あぁぁあぁ・・・やっぱり3時のおやつは良いね!クッキーおいしいし。」
よくわからない発言をしながら、私はクッキーに手を伸ばす。
すると。
「ナマエ・・・。」
「・・・え?どこかで聞いたことがある声がする・・。」
だけど、部屋には誰もいないはずだ。
「ナマエ。」
それでもまだ、その声は聞こえてくる。もしや、幽霊なーんて・・・。
そう思っていると、ドアを叩く音がする。
「ナマエ、頼むから開けてくれぇ!!」
「・・・もしかして・・・。」 
ドアを開けてみると、目の前に幽霊よりもやっかいな人物が居た。

「・・・シェゾ。やっぱりあんただったか。」
どうかした?と聞く前に、シェゾは口を開いた。
「俺はカフェ↓オー↑レ↓派DA☆」
「・・・あ、そうですか。さようなら。」
シェゾを見なかった事にしてドアを閉めようとしたら、シェゾがドアの隙間に指を入れていた。(そんな事したら、閉めれないじゃないか!!)
「ナマエ・・・俺は今、金がないんだ。」
「だから何だ、お前の好みと何の関係があるんだ。ついでに、貸す金は1万が限度だ。」
そう言って閉めようとするが、シェゾの力の方が強いらしい。ドアの位置をこのまま維持することしか出来ない。
この状態を維持できるか、と聞かれたら間違いなく無理だ。(早く手を離してくれ!!)
「金も貸して欲しいが!!・・・ナマエ。俺は腹が減っているんだ。」
「やっぱり貸して欲しいのか!?と言うか、腹が減っていると言うことは、何か食べさせて貰おうとか言う口か?」
「頼む!!お前だけが頼りなんだ!!」
そう言って、頼むシェゾが妙に可哀想になってきた。(むしろ、私がいじめているようだ。)
「・・・・・・。」
私はため息をつくと、シェゾに向かって話し始めた。 
「手、離してくれない?」
「ナマエ!本当に頼む!!だから閉め「開けれないんですけど。」・・・え?」
私の言ったことに驚いたのか、下を向いていた顔を上げる。(うわ、少し涙目だよ?!)
未だに手を扉から離していなかったので、私はもう一度話した。
「・・・開けれないんで、手。離してくれないかな?・・・別に入りたくないなら良いけど。」
そう言うと、シェゾはぱぁっと顔を明るくさせる。
「ナマエ、大好きだ!!」
「っ・・・あーはいはい。そういうことは、アルルとかに言ってあげなよ?」
「ナマエ。俺はアルルが欲しいんじゃなくて、あいつの力が欲しいだけなんだ!」
「あーはいはい。わかってますって。」
そう言いながら、私は自分の部屋へと入っていった。
「・・・ナマエの奴、本当にわかっているのか?」
というシェゾの言葉は、もちろん聞いていなかった。

「あぁぁぁ・・・やっぱりカフェオーレ冷めてる「それは違うナマエ。カフェ↓オー↑レDA☆」・・・別に発音なんて良くないですか?」
そう呟きながら、私はコップを持つ。そして、手に熱を集めることに集中する。 
10秒ぐらい経つと、私の手の中のカフェオーレは温かそうに湯気を出していた。
「流石だな。俺がやったらカップが溶けるところだぞ。」
「加減が出来んのか。不器用だねぇ。」
そういいながら、温めたカフェオーレをシェゾにも勧める。
そして、シェゾがそれを美味しそうに飲んでいるのを見ながら、私はクッキーを頬張る。
「ん、美味しい。」
「別に・・・誰が作ったって、同じだろ?」
「いや、同じじゃない。ナマエのカフェオーレは甘くて美味い。」
「それって、砂糖の量の関係じゃ・・・・。」
そう言うと、シェゾは違うと否定する。(何が言いたいのか・・・。) 
それが長くなると思った私は、話題を変える。
「・・・シェゾ、もし私が居れてなかったら、どうするつもりだったの?」
「その時は・・・何処かで食料をぶん取ってきた。」
少し考えて出した答えがそれか。私は少し頭が痛くなりながらも、口を開いた。
「・・・この後どうするつもり?」
「あー・・・金が入らなかったら、何処かで「食料をぶん取るな!!」
やっぱりと思いながら、私は呟く。
「わかった、お腹がピンチのときは私の家に来ればいい。」
「ナマエ・・・?それって。」
「食べさせてあげるけど・・・ただ単に私の知人に犯罪者を作りたくないだけだからね。」
そう言うと、さっきと同じようにぱぁぁっと顔を光らせる。
「ナマエー!!」
「だぁぁぁあ!!だからといって、くっつくなこの変態!!」
そう言って、引き剥がそうとするけれど、上手く剥がれない。
焦る自分の頬に、熱が集まるのがわかるけれど。


その熱の意味を私はまだ知らない


「その代わり、私に数学教えてよね。」
数十分たった後、やっと引き剥がせた私が言ったその言葉が、ちゃんと言えていたかどうかは良く判らないけど。
ただ一つわかることは、すぐ近い未来にまた同じようなことが起こるということぐらいだ。


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