ショート | ナノ
来年へのカウントダウン


「1月1日まで、あと15時間前・・・。」 
仕事もなく、のんびり過ごせる。そう思っていたら、宿題という最大の敵がいたことを忘れていた。
「ナマエさんは数学と英語が苦手なんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
机に突っ伏しながら、叫ぶ。
元旦には宿題のことを気にしたくなくて、終わらせようと努力はしているが。
「終わらないー。終わらないんだよ・・・。」
目の前に並ぶアルファベットと数字がにやにやと笑っているような気がした。
 
来年へのカウントダウン

「誰かに教えて貰おうか・・・。うん。そうしないと終わらない。」
クルークは・・・だめだ。今嫌みをいわれたら、絶対泣ける。
友人を思い浮かべては、どんどん消えていく。
「・・・!!そうだ。レムレスなんてどうだ!」 
最後に出した答えは、レムレスに教えて貰うこと。
だけど。
「ナマエさんはフェーリに嫌われ(呪われ)たくはないんだぁぁあぁあ・・・。」
彼女を敵に回すとかなり怖い。と言うか、敵なんかに回す人はいるのだろうか?とか思ってしまう。
「もう駄目だ・・・寝よう。寝たら頭も活性化する!!」 
そう言って私は、机の上に頭をのせて、目をつぶる。
おせちや掃除したから(宿題終わってないけど。)、何とかなる!
そう思って(逃げて)、私は意識を手放した。

目が覚めると、目の前に青い目がありました。(わぁ、綺麗綺麗。)
と言うか、綺麗だなぁ。とか見入っているのは良いけれど。 
・・・誰か部屋に入れたっけ?
そう考えたとき、真っ先に否定の言葉が出てきた。(いや、空っていうか海というか、綺麗な青だけど。)
「近い近い、そして誰!!」
いきなり頭がさめた私は、少し距離をとって不法侵入者を見た。
「・・・誰とはないだろう。ナマエ。」
そう言うのは、どこからどう見たって。
「・・・シェゾ。」
「ん、どうかしたか?ナマエ。」
「いや、『どうかしたか?』じゃないでしょ。どこから入ってきたんだ。煙突なんて無いからな!」
「ナマエ・・・何でいきなりそこで煙突が出るんだ?まぁいいか。そりゃぁ、玄関からだ。」
その言葉に私は疑問を持つ。
「・・・玄関、鍵かけてあったよね?」 
「そうだな。ナマエの言うとおり、鍵がなかったら入れなかったな。」
「鍵は家の中だよ?「ん?ナマエの鍵、俺がかってに作ったのがあるからな。」
それを聞いて、私は顔が青くなるのがわかった。
自慢げにいうシェゾに聞きたい。・・・それって犯罪じゃないの?

1月1日まで後11時間前になった。
たかりに来た、と思われるシェゾと昼食をとった後、私は必死にラスボスと戦っていた。
「英語は無理矢理終わらせたけど・・・数学。グラフ、面積・・・体積・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ。」
もう自棄になって、『シェゾー、クルーク。クルークをよんでこいー。むしろ、レムレスつれてこい。』とか言っていると。
むかつくくらい、家に馴染んで新聞を読んでいるシェゾがこちらを見た。(少し不機嫌に見えるのは気のせい・・・かな?)
「・・・ナマエ。お前はさっきから、2,3問しか解けてないじゃないか。」
シャーペンの下にいる問題を見ながら、シェゾはそう言った。
「うるさい。世の中、国語と社会と、理科が少し出来ればそれで良いんだ!!」
そうシェゾに言い返した後、私は立ち上がる。
「・・・おい、ナマエ。どこへ行くんだ。」 
そう言って、私の腕を掴む。
「どこ行くって・・・クルークかレムレスの所・・・!!」
そう言うと、シェゾの眉間にしわが出来て、無理矢理机の所へと引き戻された。(痛い、腕痛いって。)
そして、私の隣にシェゾが座る。
「解らないんだから、仕方がないじゃんか!」
シェゾの【外に行かせない攻撃】に、少しイラッときた私は、そう言った。
「ナマエ。」
そう言いながら、シェゾは新聞を開く。そして。
「・・・数学だったら、俺も教えられる。」
と、言った。実は頭が良かったのか!!とか思っていると、シェゾに頭を小突かれる。
「ナマエ。今、変なことを思っただろう。」
「・・・イエ。」
「ナマエお前・・・。まぁ、どうでも良いがナマエ、手が止まっているぞ。」
そう言われたので、何も言わずにシャーペンを持つ手を動かし始めた。

1月1日まで、約3時間前になった。 
裏表印刷の6枚のプリントが。(数学)
「・・・お、終わった!!」
印刷だけしかやっていなかった紙が、凄い丁寧な解説付きでできあがった。
「当たり前だ。俺が教えたのだから、それくらい出来なくては困る。」
そうにこやかに笑うシェゾに、反論できない自分がいた。(説明上手かった・・・。)
と言うか、反論する気持ちよりも、崇め奉りたい衝動に駆られていた。
「マジで感謝します。ありがとうシェゾ!」
「・・・ナマエ。今は出来ても、テストに出来なかったら意味がないんだからな。」
その言葉を言われて、私はテンションが低くなる。
「その時も、教えていただけるとありがたいんですが。」 
「・・・考えておこう。」
そうぶっきらぼうに言ったシェゾは、少し嬉しそうに見えた。

シェゾと一緒に、年越しうどんを食べながら、適当にやっていた歌番組を見ていた。
「やっぱ年越しうどん美味しいよね。」
「・・・ナマエ。ここはうどんじゃなくて、ソバじゃないか?」
「だって、ソバあまり好きじゃないんだ。」
そうか、とか言いながら、うどんを食べる。
テレビの人たちが、60秒カウントダウンを始めだした。
「年を越す相手が変態とはなぁ・・・。」
「ナマエ、何か言ったか?「いや・・・何でもない。と言うか、今年は何か大変だった気がする。」
そう呟くと、あぁ、そうかもしれないな。とシェゾが頷く。
こんなぐだぐだな年越しで良いのか?とか思っていると、テレビから、華やかな音が流れた。

どうやら、年が変わったらしい。

年が変わるのを確認したシェゾにナマエ。といきなり呼ばれる。
シェゾの方を見ると、むかつくくらい綺麗な笑顔で。
「ナマエ、HAPPY NEW YEAR。」
そういわれ、私は同じ発音を呟きながら笑った。


嗚呼、こんな年越しも悪くはない。


「シェゾ、今年の目標は何だい?」
「・・・アルルの魔力を貰う、でも良いが・・・。」
そう言って、私の方を見る。
「?」
「ナマエの合い鍵を堂々と持てる様にすることだな。」
少し顔を赤くしながら、そう呟いた。 
それを聞いた私は、今でも堂々と持ってるんじゃないか、とか思ったし。
「何でそんなことが目標なんだ・・・?」
とか呟いてみたり。


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