ショート | ナノ
I put up a cake!!


「はぁ、ハロウィンか・・・少し憂鬱だな・・・。」 
窓を覗きながら、私はため息をついた。
「何で、人にお菓子をやらねばいかんのだ。」

そう言いながらも、お菓子を用意している自分も自分なんだが。外には、お化けや狼男、魔法使いの仮装をした人が歩いている。(魔法使いって・・・いつもじゃないのか??)

コンコン
音のした方を見ると、にこやかに笑っている男がいた。(ここ、2階なんだけどな・・・。)
 
取りあえず、笑っている男・・・もといレムレスと話をするために窓を開ける。
「・・・やぁ、レムレス。」
「やぁ、ナマエ。とーっても素敵なハロウィン日和だね☆」
「いや、それは分からないが。・・・まぁ、晴れて良かったな。」 
そう言って空を見ると、確かにレムレスの言う通り、ハロウィン日和かもしれない。

「星が・・・綺麗だな。」
「でしょ?ナマエも外に出てこればいいのに。」
面白いよ?お菓子貰えるし。と言われ、私は首を振りながら答える。

「いや、逆に取られる可能性もあるんだぞ?」 
「うーん、そう言われればそうかもね。でも、勿体ないなぁ・・・。」
とかなんとか言われて、私はレムレスに別の話題をすることにした。

「・・・で?レムレスは私の所に何で来たのかな?」
「え?あぁ。」
これを渡そうと思ってさ。そう言って鞄から取り出したのは、スイカぐらいの袋に入ったお菓子。 

「えーっとこれは・・・?」
「試作品のお菓子なんだけどね。ナマエに食べて貰おうと思って。」
そう言って渡されるお菓子の袋。
「・・・貰わないといけないのか?」
「そうだよ、ナマエ。」
貰ってくれないと、イタズラしちゃうよー??といわれ、仕方なく貰う。

「虫歯になりそうだな。」
「ナマエなら大丈夫だよ。」
「その自信はどこから来るんだか・・・というか、太りそうだ。」
本気で太りそうだ・・・ともう一度呟けば、また「大丈夫」の一言で片付けられてしまった。
「何が大丈夫なんだか・・・。」
そう言いながら、ふと冷静になって考える。 

今日ハロウィンなのに、私が貰ってどうするよ? お菓子の量は違うが、いつもとあまり変わらない。 その事に気づいて笑っていると、レムレスに凄く不思議な顔をされた。

「どうかしたのナマエ?」
「いや、あまり変わらないなぁ・・・と思ってさ。この行動が。」

そう言うと、レムレスは少し考えるように手を顎に添える。私はそれを見て、少しため息をつきながらこう言った。

「取りあえず、私の家に入っても良いから、箒から降りてくれないかな?」
こっちが凄くハラハラするんだよ。落ちないかって。

「でさ、ナマエ。さっきの話なんだけど、僕、色々考えたんだよね。」
あれだけのことで色々考えられるのか、とか感心しながら私は近くにあった椅子に座る。

「ナマエが言いたいのは、ハロウィンなのにハロウィンらしくないと、そう言うことなんだよね?」
「まぁ・・・そうとも言うな。」
「じゃぁ、はい。」 
次の瞬間、私の目の前にいきなりレムレスの手が出てきた。
「は!?」
「お菓子、くれないの?」
イタズラするよ?とにこやかに言われて、私は何でこんな事になったんだ!?と焦りながら答える。

「さっきお前から貰っただろう!?」
「でも、ナマエはそれがハロウィンらしくないんでしょ?」
そしてナマエ。と呼ばれると、彼はおきまりの台詞を口にした。

「Trick or Treat☆」
そう言ってニコニコと笑ってこちらに手を出してくるので、私は棚の上に置いてある袋達の中のひとつを取りに行った。そして帰ってくると、どんなイタズラをしようか考えているレムレスが居た。それを見て、少し頭痛がしたのは気のせいじゃないだろう。私はため息をつきながら、レムレスの手にお菓子を置いた。


悪戯されたくないもの!!


「あーあ、悪戯したかったなぁ。」
「・・・お前の悪戯は、蟻が寄ってきそうだからな・・・。」
そう言うと、一瞬キョトンとした後、面白そうな顔を浮かべる。
「?」
「ナマエ。蟻が寄ってこない悪戯なら良いの?」

それに、対して。
「うん、良いんじゃないか?」 と、答えてしまった私は、後で後悔することになる。


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