ショート | ナノ
紫色の憂鬱


「ねぇ、聞いてる?」
「うーん、、、」

曖昧な返事を返しながら頷きながらも、私が差し出した手を少年はじっと見つめる。

「何?」
「だーかーらー!!そろそろ季節的に寒いでしょ?手を繋ごうって言ってるの!」

言わせないでよ、なんて拗ねてみせても少年には通じないのだけれど。恥ずかしいのを我慢して少年に強請る。少年は少し躊躇して、自分に近い側の手とは逆の手を差し出した。


むらさき色の憂鬱


「そっちじゃ、うまく繋げないでしょ?」
まぁ自分が反対側に移動すれば良いだけのものであったが、少し気になったのだ。
「でも、こっちの手、ヘンだから。」
少年は少し寂しそうな笑い方をしながら赤く変色した片腕を見る。

「だから、こっちに、して?」
そう言う彼の表情はいつも通り何を考えているのか解らないが、とりあえずこの前気にしてないと言ったのは嘘だったらしい。

「シグは、気にしてないって言ってたよね?」
「うーん、言ったかも。でも、君はそういうの気にするでしょ?」
「あのね、私がそんなの気にすると思う?」

ほら、貸しなさい!なんて上から言ってしまうのはいつものこと。
素直になれない私を、シグはいつも何も言わず一緒にいてくれた。
片腕が赤くなろうと、どんな外見であろうと、それがシグであるなら。



「言っておくけど、私はそういうの、気にしないから!!」
「そうだね。」

短く彼はいつものように頷いた。
繋がれた手のひらは心なしかいつもより温かい気がした。


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