ショート | ナノ
ふわり、ふわり


気がつけば、いつの間にか写真のどこかに入っていて。
まぁ、いつもの写真より喜ばれるから良いか、位しか思っていなかったけれども。

「やぁ、ナマエ。頑張っているみたいだね。」
「スカイハイさんこそ、活動、お疲れさまです。」

初めは遠くから見るぐらいだったのだが、いつの間にか、世間話をする程度に仲良く・・・?なった。
いつものように軽く話をしていると、突然私の仕事の話になる。

「そう言えば、ナマエは人の写真も撮るのかい?」
「あー・・・まぁ、撮ろうと思えば撮れますよ、一応。」

ただ、自分が空を撮りたいから撮っているのだ。と言うことも少し添えて、そう伝える。
「そうか、それは素敵な事じゃないか!今度わたしの写真を撮ってくれると嬉しいんだが。」
・・・私の言うことが伝わっているのかよく分からない返事がきて、少し眉をひそめてしまったが、まぁこれも何かの縁だろう。

「まぁ一応・・・。機会が有れば、ここに連絡してください。」
カードケースに半分以上入った自分の名刺を、彼の前に出すと、彼はおずおずとそれに手を伸ばした。 遠回しに、そんな機会はないと思う、と伝えているのだが。
嬉しそうに頬辺りを掻くスカイハイさんを見ていると、絶対分かっていないなぁ・・・と思ってしまう。貴方なら私よりも腕のいい人に頼めばいいのに、と言う言葉は、何故か口には出ず。頬を緩めて、自分の名刺を持っている彼を見ていた。すると、どこかから無機質なアラーム音が聞こえる。その音が聞こえると同時に、彼は残念そうに首をすくめた。

「ナマエすまない、そしてすまない。コールが来てしまったから、わたしは行かないと。」
「いえ、構いませんよ。お仕事頑張ってください。」
手をひらひらと彼に振ってみせると、「うんナマエ。頑張ってくるよ!」と言いながら、電子音を消した。

「じゃぁ、ナマエ。また明日!」
「はい、また明日・・・ってえ?」
それは、明日もここに来いということなのだろうか?
「明日もここに来るとは限らないんですけど・・・。」

その言葉は、空を切る音と共にどこかへ飛んでいき。
そして、彼の飛んでいった時の風圧で、気球全体が名残惜しそうに体を揺らした。


ふわり、ふらりと
 

いつの間にか、彼は写真だけではなく、自分の心の中にも入り込んでいたようで。
飛んでいった彼の後ろ姿を見ながら、想像できてしまう自分の未来の行動に笑ってしまう。
多分、明日もまた、私の目は空に向かうのだから。


思いは気球に乗って
空へ、そらへ


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