れでぃふぁすと エントランスホールの前にて、長い階段を見ながら。ふと、頭の隅に引っかかったことを、口までつり上げてしまった。 「・・・虎徹さんはこう言うときはどうするんですか?」 「はぁ?ナマエどうした?」 西洋って、レディーファーストな国じゃないですか。以前聞いた話なんですけど、階段のレディーファーストって難しいって聞いたんで。そこまでレディーファーストじゃねぇと思うけどなぁ・・・。とか呟いている虎徹さんを横目で見ながら、もう一度階段と向き合ってみる。 階段に登らずに、ただじっと見ている自分たちは奇妙に見えるかも知れないけれども。 「虎徹さんなら、女性を先に登らせますか、自分が先に登りますか?」 「あー・・・そう言われてもなぁナマエ・・・・・・お。」 そう何かを閃いたと思われる彼はヒーローらしかぬ笑顔を浮かべて、自分の肩に手を置いた。 「ナマエと楓限定でなら、ある。」 はぁ、それはまた微妙な限定の仕方ですね。そう言おうと思った瞬間、いきなり妙な浮遊間に襲われる。 「・・・うぇ!?」 自分の目の前に、色気も何もない、いたって普通のジーパンと黒いスニーカーが見える。 どう見たって、自分の足。どう考えたってこれは。 「姫様だっこって奴ですよね!?いや、重いんでやめっ、ちょっ、降ろしてください!!」 「俺でもナマエの1人や2人は持てるっつーの。」 小声でヒーロー舐めないでくれる?と顔付近でそう言われれば、誰だって焦る、きっとそう。(と言うか、2人は流石に重たいと思います。) 「いや、目立ちますから!「さっきも結構目立ってたと思うぜ?」 そう言われると、何とも言えなくなってしまった自分を見て、了承と見たのか、虎徹さんはひょいひょいと階段を上っていく。 「あ、でよ。さっきの質問なんだけどよ。」 もう、さっさと階段を上ったんだから、降ろしてくれたって構わないだろうに。とか、もうそんなことしか考えていなかった私の頭上から、いきなり話しかけられた。 「ナマエだったら、俺が抱えて登ってく!」 いや、抱えて行かなくても良いです。むしろ歩かせてください、お願いします。と、何故か張り切っている彼から目を背けながら、そう呟いた。 降ろしてください。お願いします。 そのあと、やっと降ろしてくれる気になって、私の足が地面に着いたとき。 「かわいいなぁ、ホント。」 そう言われ頭を撫でられたので、嗚呼いつになったら“子供”から成長できるんだろう。と小さく心の中で呟いた。 (こっ・・・子供扱いしたって何も出ませんからね!!) (・・・そう言う意味で言った訳じゃねぇんだけどなぁ・・・。) back |