落ちて上がって 目の前に来たナマエが俺の目の前で止まって、右手を俺の目の前に突き出す。 「ナマエ・・・どうした?」 「ください。」 そう言われ、嗚呼今日はホワイトデーだったなと、一応用意していた物を出すために袋を探る。探していると、ふと、気になることが思い浮かんだのでナマエに尋ねる。 「そういえばよ、俺ってナマエからバレンタインって貰ったっけ?」 「ああ、あげてないですよ。仕事が忙しくて皆さんに配れなかったんですが・・・でも貰いたいです。」 フェアじゃない。あっけらかんと言い放ったナマエに対して、そう思った。 ・・・俺っていつからこういう立ち位置だったんだ・・・? そう考えたとき、何故か少し視界がぼやけた気がする。 「ありがとうございます。」 「・・・・・・いや、その・・・気にするな。」 結局、いつも世話になっているし、という言い訳を自分に言い聞かせながら、お返しの品だった物をあげる羽目になった。正直言って、凄く俺は気にしている。じゃぁ、俺は他の奴らに配らないといけないからな・・・と、ナマエに言って、立ち去ろうとする。 「あ、あの、アントニオさん!」 そう言って、彼女は俺を引き留める。もう俺への用事は終わったはずだ。(それとも、もっとくれと言うことなのか・・・。) 見ると、あーとかえーとか言って周りをきょろきょろ見回している。それを見ていると、一抹の淡い期待が少し持てた俺は、「何だ?」と声が弾みそうになるのを押さえながら聞いた。 「これ・・・・・あの・・・ネイさんからです!!!!!」 そう言って、真っ赤な顔して俺にチョコか何かが入ったものを押しつけて走り去っていった。 「・・・・・・おい、ナマエ。」 期待させておいて、ネイサンからかよ。 あんな顔させるから、てっきりナマエのが貰えるのかも知れないと思った俺が馬鹿だった。 「日本人って・・・本当に、なんというか・・・シャイだよな・・・。」 そう独り言を言いながら、俺は盛大な溜息をついた。 逆さまジェットコースター 取りあえず会社に帰った俺に待ちかまえていたのは、ネイサンのデカイハート形のチョコレート。 手紙には『仕事が忙しいから、机の上に置きました。』とか、なかなか綺麗な字で書いてある。 (手紙に付いている口紅模様はスルーしておく) 「・・・ん?」 じゃぁ、さっきナマエから貰ったこれは・・・? 取りあえず。ネイサンのはみんなで分けるとして、これはちゃんとあいつに聞いてから頂くことにしよう。 back |