僕らを中心に愛を語る 「ホーキンス船長は、愛って何だと思いますか?」 「・・・・・・あい?」 私がそう聞くと、船長は読んでいた本をその辺に置いてあった木箱に置いた。 そしてじっと私の方を見てくるから、何となく、そういうことになった経緯を探しているんだと思ってしまう。 「これですよ、これ。」 そう言って見せるのは、ニュースクーの新聞のとある部分。 事件の内容は至ってシンプルで、不倫の相手が好きな人を殺害したと言う事件。 まぁ、当人たちにとってはシンプルじゃなくて、ドロドロで複雑な人間関係をしていたんだろうとは思うけど。 「この犯人が、『愛してたから、殺したんだ。』って言ったらしいので。・・・愛ってなんだろなと思いまして。」 「・・・そうか。」 私の言いたいことを理解してくれた船長は、少し時間を使った後、のそりと動き出した。 ・・・腰を上げるのがゆっくりだったから、シャボンディであんなことになったんじゃないのか。 そんなことをちらりと思うけれど、あくまでもそれは心の中に留めておく。 きっと言ったって聞かないだろうからなぁ・・・なんて思いながら、船長なりの答えを待つことにした。 帰ってきた船長が持っているのは分厚い本。ぱらぱらとめくる姿を見て、様になるなぁと感心していたら、急に話し始めだした。 「・・・親子、兄弟などがいつくしみ合う気持ち。また、生あるものを「ちょ、ちょっと待ってください!!」・・・なんだ。」 「いや、なんでそんな不服そうな顔してるんですか!」 「ナマエ。不服そうだ、じゃない。おれは今不服なんだ。・・・どうして止めた。」 「いやいやいや!そりゃぁ、絶対止めますって!!」 転ばないように足場を気を付けながら近づいて、そしてこれまたズボンが汚れないように気を付けながらしゃがむ。 目に入った背表紙をみて、私はやっぱり。と呟いて、船長に口を開く。 「だってこれ、辞書じゃないですか!!!どっちかというと、船長の『愛』の概念が聞きたかったんですけど!」 「・・・駄目か?」 お前はよく分からない奴だと言うような顔で首を傾げられてしまって、私は船長らしいことで・・・と呟くしかなかった。 「それならナマエ。」 「はい?何ですか船長?」 とりあえず持って帰れるものだけ持って帰ろうと、荷物を抱え始めると、後ろからそう呼びかけられる。 「愛している。」 「なっ・・・!!」 手の力が抜けて物が落ちて。ゴンとかうっ!とか聞こえるけど、今の私にはそんなことは全く見る事が出来なくて。 じっと私を見つめるホーキンス船長をじっと見ることしか出来ない。極め付けに。 「おれの『愛』は、お前だ。愛してる。」 なんて言うものだから顔は熱くなるし、視界はぼやけてくるし。 「・・・・・・ナマエ、泣くな。」 「な、泣いてません!!」 「そんなに嫌か?」 ぼやける視界の中で、そんな顔して聞いてくる船長は、卑怯だと思う。 「き、嫌いじゃないですよ・・・・・・!」 「では好きか?」 「え・・・あ・・・!」 「曖昧は嫌いだ。さっさと言ってくれ。」 ああ、もう!本当に卑怯だ。 「好きですよ・・・あ、愛してますよ!!!」 僕らを中心に愛を語る 「・・・・・・船長たちあんなところでやらなくても・・・。」 「だからと言って、お前、あの空間に入れる勇者になれるか?」 「いやぁ、無理だ。絶対馬に蹴られる前に、船長に何かされる。」 「確かに。・・・・・・でもなぁ。」 「ああ。」 「別に、海軍船でやらなくても・・・。」 「違いねぇよなぁ・・・。」 自分の船の甲板とかでも困るけど、敵船の甲板でやられてしまったら、おれたち、どうすればいいんですかね。 * * * * * * 「ホーキンスと海軍船の上で愛を語り合う」 back |