ショート | ナノ
不規則な鼓動


ピピピピと睡眠を遮るかのように、携帯の音が鳴る。メールだろうと高を括っていたのだが、一向にその音は鳴りやまない。

「っち・・・電話かよ。」
おれは音を頼りにそいつを捜す。
「トラファルガーとか麦わらだったらぜってぇ切ってやる。」
むしろ、今度会ったとき殴ってやろう。そう思っていたのだが画面を見ると登録以降、電話を一度もくれなかった奴の名前があった。
『あ、ごめん起きてなか「おぅ、ナマエ。どうした?」
切られる前に、急いで通話ボタンを押して話し始める。
『あ、いや、大した用事でもないからさ。』
それでもナマエはおれが寝ていたことに気付いたのか、起こしてごめんね。と謝られ、電話が切れそうになる。
「おい、切るなよ。・・・起きてた。」
これは嘘だが、コイツだって解った瞬間に目が覚めちまった事は確かだ。

『そう、なら良いけど・・・。』
「で、何だよ。」
『んー・・・・・・やっぱり明日じゃ駄目かな?』
「駄目だ。」
   こまったなぁ、とか何か独り言が機械越しに聞こえる。
いつもだったら、この時間がイライラしてしまい、怒鳴り声のひとつも上げるのだが。
ナマエだと、そんな気さえ起きないと言うのは、もういろいろと末期なんだと思う。
しかしナマエに悟られたくないので、わざとイライラしたような声を出してナマエの用件を聞いた。
『や、だから。明日「駄目だ。早く言っちまえよ、楽になるぜ。」アンタは何処の刑事ですか。』
まぁどっちかって言うと、ユスタスはチンピラAな気がする。とか言いやがった。(・・・明日覚えとけよ。)

しばらくそんな他愛のない話をしていると、ふとナマエが時間だ。と呟いた。
時計を見ると、針は丁度真上に来ている。
「こんな時間に何かあんのかナマエ『・・・・キッド。』!・・・何だよ。」
『キッド、お誕生日おめでとう。』
そう言った後に、『明日プレゼント渡すけどさ、言いたかったんだ。ベタでごめんね。用事、これだけなんだ。』と言った。
「別に、良いけど゙よ。・・・明日だって言えただろ?」
『あー。うん、そうなんだけどね。一番初めに祝いたかったし、ユスタスの声、聞きたかったんだ。』
いつもの呼び方に戻ったことに少し不満が残るが、その言葉で一気にまた何かがこみ上げてくる。
「そ、そうか。なぁナマエ『ユースタス、誕生日なキミに悪いんだけど、1つ頼まれてくれないかな?』・・・何だよ。」
その後、おれは余り眠ることが出来なかった。


テンポ・ジュストに戻らない
 

「おい、ユースタス屋・・・眠れなかったのか?酷いツラしてるぞ。」
「・・・うるせぇ。なぁ、トラファルガー。個人別音設定ってどうやるんだ?」
「・・・・・・・・・・どうしたいきなり。」
「な、何だって良いだろ!!」


『また電話しても良い?』だなんて、今日も眠れる気がしない。


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