2/14 厨房にて 「・・・それ、食べれるの?」 「・・・ヒヒッ、喰えるさ。」 じっ、と厨房で調理台が空くのを待つ。でもどう考えても色や形のやばそうな食材ばかりが調理台に並んでいる。食べられるかもしれないけど、これは食べたくないなぁ。手元にあった丸い物体を触ってみたが、なんかぬちょりとしていて、厨房を使用しているグリンパーチに聞けば、なんかの卵らしい。 「これ食べるの?」 「あ? そりゃそうだろ。」 じゃあお前は何を食べるんだ、とそう聞かれてしまえば。これ・・・とは言いにくい。取りあえず言葉を濁してやれば、グリンパーチがなにかの果物を手に取り、器用に包丁を回して皮を螺旋状に剥ぎ取っていく。 「・・・これなら喰えるか?」 「・・・なにこれ。」 「なんとかって言う果物だぁ・・・忘れちまった。」 果物なら大体食べられそうだ。かぷりとそのまま口に運んでみれば甘い果汁が口一杯に広がる。 「美味しい!!」 「そうか、ならこれ以上邪魔するなよ・・・ヒヒッ」 邪魔をしているつもりはなかったのだが、結果的にはそうなのだろう。少し肩を落として椅子に再度座り直せば、調理を終えたのだろうグリンパーチが煙草を吸いながらこちらに近づいてくる。なんだろ。 「・・・で、今から何するんだ?」 「料理。」 「ヒヒッ、お前に出来るのか?」 「・・・大丈夫・・・だと思う。」 暫く考え込んだ後、グリンパーチは調理場の椅子にどっかりと腰を下ろした。どうやら自分が何をするのか見ていることにしたらしい。どうしようかと思ったのだが、まぁ見られていても支障は無いだろうと判断した。それにエグい料理ばかり作っているが、これでも副料理長。グリンパーチが見ていてくれるのだったら心強い気もする。 「ナマエ、料理はいいが食材はあんのか?」 「えっ、あ、うん。」 緑色の葉で作られた簡易的な袋を鞄から取りだして中身を机に並べる。ビスケットサウルスの鱗、チョコナッツの実、米砂糖。 どれもさほど加工も難しくない食材だ。依頼されていた食材の捕獲ついでに以前よりセドルに頼んでいた物である。 「・・・普通だな、」 「難しいのは調理出来ないから。」 リクエストしたのはセドルである。なんか今日はチョコレートの日らしく、人からチョコを貰うと幸せになれる日らしい。そんなワケないじゃん、と思いながらも酷くセドルが嬉しそうに話す物だから、簡単なやつなら作っても良い、と言ってしまったのだ。実はこれが初めての調理である・・・とセドルは知る由もないのだが。 「・・・何作るんだ。」 「実の中身のチョコと砂糖混ぜて、砕いたビスケットと混ぜて固めるだけ。」 「・・・それだけか?」 「それだけだけど、何?」 ぶすっと膨れてみれば、グリンパーチは酷く愉快そうに笑った。 「子供にゃ・・・そんなもんかァ・・・ヒヒヒッ!!」 「笑うな!!」 はじめてだし、それでいいってセドルも言ってたし!!良いじゃないかそれで!とムキになって怒れば更に笑われた。下せぬ。 「・・・あんま混ぜすぎると旨味飛ぶぞぉ〜?」 「・・・!!」 食べられるなら良いじゃない! (・・・俺にもくれんのかァ?) (手伝ってくれたから一個だけね! 残りはセドルとスターのだから。) (へぇ・・・) (他のまで吸おうとしない!!!) back |