ショート | ナノ
耳が生えました


「ふぇ、なにこれ・・・」

ぴょこりと頭の上から生えている、ふわふわとした耳に、しっぽが生えているなんて。夢かと思ってしっぽを掴んで引っ張ってみれば、びりりとした痛みに目が眩む。

「ナマエ、・・・すっげぇ、可愛いぜ!!」

やっと起きた自宅の食いしん坊ちゃんは起き抜けの自分の姿を見て大笑い。こちらからしてみれば正直笑い話所じゃない!と怒鳴って気付いた。

「あれ・・・? トリコも生えてるじゃん。」 
「ん? あ、そうだな。」

今気付いた、と言わんばかりのトリコは気にしてないと言わんばかりにニカリと笑う。大柄な体躯に合わせて生えるものも大きいのか、Tシャツの外に飛び出している太い尾はふわりと揺れた。

「トリコ・・・トリコさん、ちょっと・・・」
「あ?何?」
「お願い、ちょっとだけ、触らせて?」

優しく掴んで見ればトリコは一瞬体をすくめたものの、それ以降は大人しく触らせてくれた。自分の手首ほどあるかと思われる太くしなやかな尾はトリコのだというから毛羽立っているかと思えば、近づいて触ってみれば酷く柔らかい。

「やばい、かわいい・・・・っ、」

髪色と同じ鮮やかなブルーの毛並みは窓の外からの光に当たってキラキラと光るようで。よく見てみれば、髪からひょこりと覗く耳も、少し鋭くなった八重歯だって全て可愛らしいと思えてしまう。サニーやココには何度も言われたが、やはり私は趣味が悪いらしい。幾ら性格が子供でも、2Mを超えるいい年の大男に猫耳やしっぽがついて、それで可愛いと思うなんて。呆れているトリコさんの、そんな顔もなかなか可愛いと思えてしまう手前、やはり自分はおかしいらしい。

「なぁ、ナマエ。もういいだろ?」

くすぐったい、と身を捩るトリコに不意打ちでキスを仕掛けてみる。身長差のせいで顔には届かなかったので、首筋へ噛み付くようなキス。いつもより鋭さを増していた歯は、いつもより鮮やかにそこに痕を残す。

ひゅっ、と息をのむ音。こちらを見たトリコの目には先程まで笑い転げていた為、涙がうっすら溜まっていて酷く艶やかだ。

「かわい、」
「今日のナマエ、なんか変じゃね・・・? 発情期?」
「かも。トリコが変なもの昨日食べさせたから。」

茶化すように言われたそれに、大人しく肯定を返せば引きつった声がトリコの口から漏れる。

「つーか、今日のお前、怖い!!」

喰うのは俺、リードするのも俺なの!と子供のように駄々をこねる男。いつもなら、はいはいで終わらせてしまう所だが。

「トリコ、今日はいつもと逆の立場やってみない?」
「逆って、お前突っ込む物無いだろ・・・つーか、女に突っ込まれるって・・・」

何か想像したのだろう、さっと顔を青くする最愛の男に唇を尖らせて反論する。

「そこまで私、マニアックじゃないんだけど・・・というか、何を想像した!!」

じゃぁ、何なんだよ・・・とトリコが気を抜いた瞬間に、トリコの四肢をがっちり髪で絡め取る。ぼふり、とトリコの重い体重をベッドに投げ込めば反動でベッドが軋みをあげた。

「まぁ、私に好きなように弄られててよ。」


雌猫のワルツ


ダンスホールに投げ出された雄猫はただ啼き踊るのだ

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