とけない結び目 「ひぎゃ、」 「おまっ、」 2人同時に声を上げるものだから、一緒に居たトリコが頭に?を浮かべながら、首を傾げた。トリコの視界にはなにも変わったことなど捉えられないのだが、本人達はいたって真剣そのものである。 「サニー、ちょ、どうにかして!痛い!」 「ナマエこそ、どうにかしろし!!」 動くたびに軋むように痛むそれを、掴もうとするが、自分の触覚の位置しか確認できないのに、無駄な行為である。相手の触覚がたとえ見えたとしても、それを解く程の手先の器用さも無いのだから、必然的に手段は限られてくると言うもの。 「もちろん、サニーが、切るよね?」 「ーっは?俺の髪は特別なの、切んならお前の方だろ?」 「はぁ? 髪は女の命って言うしさ・・・一本(?)くらい良いじゃん・・・」 「ごちゃごちゃうるせぇなぁ・・・どっちだって良いだろ・・・一本や2本・・・」 トリコがついつい、といった様子で口を挟めば、両耳から批判の嵐。 「リコ、お前・・・、マジありえねー!つくしくねー!!」 「こっちは神経通ってるんですよ、痛いんです!馬鹿!!」 「あー、はいはい。 勝手にやってろよ。」 「おい、リコ!! 何処行くし!!」 「・・・腹減ったから、飯狩ってくるわ。」 帰ってくるまでにはそれどうにかしとけよ!と笑うトリコは何処まで行っても他人事だ。(実質特殊体質だから、この痛みは当人同士にしか分かるわけもないのだが)青い草原の上に取り残された2人は顔を見合わせても、何処か視線は上の空である。 「サニーが、悪いんだからね。」 「俺、悪くねーし。お前が大人しく触られてりゃ、問題なかったんじゃね?」 何故、そもそも触覚が絡まったのか。簡単に説明すれば、サニーが ナマエに触覚で、セクハラをしていて、それをナマエが同じく触覚で振り払っていた、というシンプルなもの。通常なら絡まることはないのだが、如何せん偶然とは恐ろしい。ふざけていたのは初めだけで、それがどうしても解けないとなるとどちらもダメージを被りたくない一心で弁解を始めるのだ。 「つーか、触覚操作して、解けねーの?」 「私に言うな、私に。」 「細かいコントロールくらい出来るようにしとけよ・・・」 溜息をつくサニーに、こちらも負けじと息を吐き出す。 「じゃぁ、サニーこそ解けないの?」 「俺に言うなよ、俺に。」 解こうとして解るところだけ緩く解こうとすればするほど絡んだ、と事後報告を受ける。 「サニ・・・馬鹿、あんた何やってんの・・・」 「なぁに、やってんだろな、ントに。」 しばらく天気のいい青い空に、視界を泳がせていると、隣のサニーが不意に口を開いた。 「なぁ、ナマエ。」 「なぁに?サニー・・・」 声のするほうへ視界を逸らすと、嫌に真剣そうにじっと合わさる瞳。ターコイズブルーの瞳に、きょとんとした顔の自分が映る。ああ、サニーは睫毛やっぱり長いなぁ、なんてしげしげと思ったり。 「もう、いっそ絡んだまんまでよくね?」 「・・・いやいやいや、まぁ多少自由距離あったとしてもね、」 零か百か、極端すぎるサニーに呆れてしまう。 「俺は別に、ナマエとなら一生一緒でも構わねーし、」 「・・・ばっ、何言って・・・!!」 「まぁ結論、髪どっちかが切らねーと結局このままだしな。」 そういって朗らかに笑う彼は、酷く綺麗でした。 結ばれた未来が解けない back |