幸せクローバー 「こまつー! 小松!!」 「はいはい、なんでしょうか?」 休日。携帯の着信音に画面を覗き込めば、表示されていたのは、パートナーのトリコの家に居候している女の子の名前。一体なにがあったのかと、通話ボタンを押せば、のんきな声で「今日、暇?」と聞かれ、そのまま連れ出されて今に至る。 いつものデパート等でのショッピング、買い食いなどが主流のコースではなく、のんきにただトリコさんの家の傍でテリー達と一緒に散歩、ピクニックの簡易コース。 「これ、見つけたからあげる。」 手に握られていたのは四つ葉のクローバー。 「見つけると幸せになれるんだって。」 「ああ、でも摘んじゃ駄目ですよ・・・?」 二つ目を摘もうとする少女の手を制止して言うと、少女は?マークを頭に浮かべて首を傾げる。 「何で?」 「幸せを摘み取るってことで、ちょっと・・・」 迷信だろうし、そんな事はないのだろうけど闇雲に摘んでしまうのは植物といえども可哀想な気がする。トリコと出会ってからと言うもの、全ての物の命を大切にしようと思う気持ちに、より一層磨きが掛かったきがしてならない。 「じゃあ、これあげる。小松が持ち帰ればいいんじゃない?」 もう摘んじゃったし、と笑う彼女の手に残るクローバーをそっと受け取り笑う。ありがとうございます、と感謝の言葉を述べてみれば、満足そうに少女は目を細めた。 にっこり、と風に自慢の髪を靡かせながら笑う彼女。その微笑みにうっかり心臓の鼓動が跳ね上がる。耳のいい彼女のことだ、心音のぶれまでしっかり聞こえているに違いない。恥ずかしさに耳まで真っ赤に染めれば、少女はくすりと笑って頬を撫でた。 「幸せを持ち帰れば、小松は幸せになれるでしょ?」 「・・・・・・!!」 片手に握ったクローバー。それを握りしめ立ち上がる。立ち上がったときにかち合った少女の目は、驚きで大きく見開かれていた。 「どしたの、小松。」 「僕も・・・、僕も探します!!!」 摘むのは止めた方が良い、とさっき口にした唇で、真逆の言葉を紡ぐことを少女は矛盾していると笑うだろうか。一人だけ幸せになっても、僕自身は本当に幸せにはなれない。それは一番最近、身をもって実感したばかりなのだ。 「僕だけ幸せになったとしても、僕は嬉しくないので、僕も探します!」 みんなが幸せに笑い合って、食卓について、美味しい食事をとること。僕の幸せは、僕だけでは叶うことはないから。 「僕も、ナマエさんを幸せにしたいんです!」 「小松・・・?」 ぼぼっ、とすごい勢いで首から上にかけて全て赤くする少女に、なにか変な事を自分は言ったのか、と言葉を反芻して、すっごく恥ずかしくなった。 だって、その言葉ってうっかりしたら、 「なんかプロポーズみたいね?」 「そっ、そんな!! そんな意味じゃ・・・!!!」 本気にされてもよかったと少しでも思ったなんて、トリコさんには絶対に言えません。 幸せクローバー back |