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早く縛り付けて


(異性から送られる装飾品には意味がある)

へぇ、と興味なさげに雑誌をぺらぺら捲れば、一言のフレーズが目に飛び込んでくる。

「アクセサリー?」

ムリムリ、食以外に何も考えてないようなあの大男に、そんな繊細な精神なんて無いに違いない。愛してる、とか好きだ、とかは良く聞くけど、キスくらいしかまだしてないし、付き合ってるのかと言われれば微妙なラインだ。それっぽいプレゼントも貰ってないし、きっと違うのだろうと思う。だって世の恋人達はなんだかんだで証を欲しがるものだろうし。

というか、ふとリビングにおいてあったから読んでしまった物の、この雑誌は明らかに自分のものではない。とすれば必然的にこの雑誌は同居している大男、トリコの私物と言うことになるわけで。

「似合わない・・・」

しかも完全メンズ誌ではなくどちらかといえばファッション誌なそれを、あのお洒落等に疎い(勝手に思ってるだけ)のトリコが読むだろうか。でも、おいてあると言うことは読むんだろうな、と思って更にページを進めれば右ページに違和感を感じる。

「折り目?」

ページの隅を綺麗に折り曲げて印付けられているページは、なんだかんだで質問コーナー。チープな恋愛相談がいくつも並んでいる、そこにきっちりした折り目。

「なにこれ怖い。」

"一番魅力的なベッドへの誘い方は"、"上手なキスの実践方法は?"
そんな感じのちょっとピンク色っぽい質問が飛び交っているのに苦笑していると、ソファの後ろから髪の毛を引っ張られる。

「いでっ、ちょっと何してっ・・・・・・。トリコ、おかえりなさい。」

やべぇ、と思った。そんなに読んだこと怒るんだったら、こんなに解りやすい机の上なんかに置くな。そう言おうと思って、止める。より怒らせたら後が怖い。

「ただいま、ナマエ。 所でおまえ、何読んでるんだ?」

今明らかに自分の手の中にある雑誌は見えるだろうに、あえて聞いてくるところから、やばい、と思ってページを勢いよく閉じる。

「な・・・なにも!! 何も見てない!!」
「あ・・・? それサニーの置いていった雑誌じゃねーか。」
「へ? トリコのじゃないの?」

女性誌かファッション誌だったろ、と取り上げられた雑誌。折り目の付いたページを開いたトリコがにっこり笑う。あ、死亡フラグ立った。完全に卑猥な質問コーナー見てると思われた。

「お前も、興味あるのかと思って期待したんだがな。」
「・・・興味、無いわけではないけど・・・」

ばっ、と広げられたページにあったのは質問コーナーではなく、銀色に煌めくリングの写真の付いたカタログのページだった。折り目は左側、要するに質問ページの1ページ前のページになる。

「サニーに相談したら雑誌持ってきてくれてよ・・・でもまだ早かったか?」
「指輪・・・? まじで・・・?」
「おう、お前もうすぐ誕生日だろ? どうかなと思ったんだけど・・・俺やっぱ重いか?」
「ううん、全然大丈夫。 むしろトリコがそんなくれるなんて思わなかったし・・・」

酷ぇな!って軽い口調で返すトリコに、ありがとうの気持ちも込めて抱きついてみる。耳元を掠る息が少しくすぐったいが、問題にはならないレベル。首元に顔を埋めれば、少し男らしいトリコの匂いがする。

「今度、指輪、一緒に見に行くか?」
「ん、」

小さく肯定を返せば、トリコがくすりと笑って次のページを背後で捲る。無理矢理閉じたせいでどこか変に皺の付いたページを見逃すはずもなく、そこに書かれていた内容に口元をにやけさせながら、トリコはナマエに話しかける。

「・・・で、こっちの質問コーナーで気になることあるなら、俺が直接教えてやるけど?」
「・・・馬鹿!!」


Allacciami presto


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