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テリトリー侵入者


休日。

「ルーッチ、ルッチ、起きて!!!」

朝は苦手だというのに無駄に元気な声が扉の向こうからする。あけないと絶対にあとで文句を言われるのは目に見えて分かっているので、聞かなかったことにはできない。そもそも己よりも猫のように気まぐれな彼女の機嫌は変わりやすいのだ。

「ルッチ、 起きてる?」 
「・・・ああ、今起きた。」

薄目をあけた状態で扉を開くと、可愛らしい声のモーニングコール。

「今日は休日なの、分かってるよな?」
「だから、遊びに来たんだけど。」

コイツに空気を読むことを期待した俺が馬鹿だった。ニコニコ笑いながら彼女はひょこひょこと部屋に進入する。ソファーの上は昨日夜に脱いだ上着が無造作に散らかっていたが、それを押しのけて彼女は自然な動作でベッドに腰掛けた。

「・・・私、ルッチの部屋入るの初めてだけど、結構散らかってるね。」

そういえば何度かナマエの部屋に行ったことはあるが、俺の部屋にナマエを入れたのはよく考えれば初めての事だった。

「・・・今日だけだ。」
「それに、なんかルッチの匂いがする。」

ぼふり、と布団にダイブすると訳の分からない事を彼女は口走っている。

「俺の部屋なんだから、俺の匂いがして当然だろうが。」
「もうすこし香水とかの匂いがすると思ってた。」
「どんなイメージだ、それは。」
「うーん、ピンクと紫、みたいな・・・そんな感じ。」

要するに女とか連れ込んでるイメージと言いたいんだなと憶測できた。そこまで分かっていて、ベッドにダイブなんて俺に見境がなかったら襲われてるとしか言いようがない。

「俺は部屋に女は入れたことがない。」
「ふーん、ってことは私一番乗りって事?」

その一言に失敗したと思ったのだろうが、口から零れた言葉は修正出来ない。俺が溜息1つ付くと、それをみていた彼女は至極楽しそうに笑った。

「・・・お前・・・俺をからかって楽しいか?」
「いや、ちょっと意外だなぁとは思ったけどね。」

その言葉に少し頭痛がした。もしかして、こいつは解ってやっているのだろうか。

「ナマエ、お前の想像してたこと、してやろうか?」

口角をあげて半ば自棄になりながら彼女に問いかけてみれば。かぁ、と一瞬にして想像したのだろう、顔を赤くして布団から飛び起きる。

「ルッチ、え、私、まだ心の準備が・・・」

口から出てきたのは拒絶ではなく、なかなか色好い返事と俺は勝手に理解した。こちらの様子をうかがいつつ、部屋から出ていくタイミングを計っている彼女。そんな可愛い反応をされて、手を出さない男は男じゃないと俺は思う。ベッドから立ち上がりかけた彼女の身体を再度ベッドに沈める。

「俺の縄張りに入ってきて、無事に帰れると思うなよ?」


テリトリー侵略者


わざわざ掛かった獲物を逃がしてやるほど俺は善良な人間じゃない

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