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夜中に足音


夜、枕元でごそごそと物音がする。同居人のパウリーかと思って薄目を開けて横を見てみたが、リビングを挟んで向こう側にあるベッドには、大きなふくらみ。それでは枕元にする物音はなんだろうか。(ドロボウにしてもパウリーなんて、盗るもの何も無いのに・・・)どうしようか、と布団の中で考えていれば、頭を撫でる指の感触。これは・・・うっかりドロボウじゃなくて変質者なのか・・・。

「きゃあああああ痴漢ー!!」

布団を上に投げ飛ばして、逃げ出してみせれば、丁度頭あたりからすっぽりと布団で視界を奪われてもぞもぞする輩。

「パウリー!パウリー!!!起きて!今すぐ!!」

ふくらみにタックルするように揺さぶり起こせば、目の前の布団お化けを寝起きながらも枕元にあったご自慢の縄で捕縛することに成功した。簀巻き状にされてもがもがと水に打ち上げられた魚のような動きの物体を前に、二人して立ちつくして息を吐いた。なにこれ怖い。

「・・・で、こいつどっから入ってきたんだ?ナマエ。」
「・・・知らない。ドアからじゃない?」
「・・・鍵は締めたはずなんだけどなァ・・・」

電気をつけて扉を確認してみれば普通に開いた。

「パウリー?」
「いや、締めたって。」

じゃあなんで開くんだと玄関から問いつめてみれば、パウリーは普通にこいつに問いつめりゃ早いだろう、と布団をはぎ取りにかかっていた。

「えっ、やだ・・・怖い恐い怖い・・・!!!」
「安心しろって、俺は職長だぞ!」
「意味分からない理由をありがとう!」

よーし、やるぞ!と布団に馬乗りになって縄を解いてみれば、中から見えたのは良く見かける顔・・・というか本人だった。普段も不機嫌そうな顔をしているのだが、いつもより更に眉間に皺を深くしていた。

「あー・・・ルッチ、お前・・・どっから入ってきた?」
「鍵がポストに入ってた。」
「パウリー・・・「ナマエ、普通はポストだろ!」
「それで、ルッチさんはどうして深夜に無断侵入なんてしたんですか?」

じっと見つめて言えば、ルッチは部屋のカレンダーを見たまま、何も言わずにこちらに視線を帰した。なんで逆に見つめられているのだろうか。

「あー・・・今日クリスマスか。」
「・・・そうだ。」
「・・・で?」

クリスマスだからって部屋に侵入して言い訳じゃないだろう!と言いかけたときに、開けっ放しだったドアがまたがちゃりと開いた音がした。

「ンマー、起きてるじゃねぇか?」 

どうしたんだ、と言わんばかりに普通にアイスバーグさんも部屋に入ってくる。なんでですか、普通に今日は家宅侵入してもいい日なんですか?

「まぁ寝てる間に置いて帰ろうと思ったんだけどな、起きてるなら・・・これ、」

ぽい、と手渡されたのはなんだか掌サイズの箱。綺麗に赤のリボンでラッピングされていてとても可愛らしい。

「ンマー・・・メリークリスマス?」
「・・・分かったか、俺が来た理由もそういうワケだ。」

ぶすくれてしまったルッチさんから目を離して、ベッドの下をみれば緑のリボンをつけた赤い箱がトンと鎮座していた。

「「・・・ご・・・ごめんなさい!!」」
「ごめんで済めば、海軍はいらねぇよなァ、」

あっはっは、と笑うアイスバーグさんはまだ半分簀巻き状態のルッチをみて、なんだかわかったようでそのまま腹を抱えて大笑いを始めてしまい、それに毒気を抜かれたのか、ルッチは私とパウリーの頭に拳骨1つ落として舌打ちしながら部屋に戻っていかれました。


散々なメリークリスマス 


「あー、もう! ごめんじゃなくてありがとうって言えば良かった!」

ベッドの下の自己主張の激しい赤い箱が、少しだけ恨めしそうにこちらを見た気がした。


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