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この身に収まりきらない愛を君に


「うんうん、他には?」
「ほか?そうだなぁ、口調、かわいらしいくて好きだなぁ。」

土佐弁ってやつ?と言いながら、また一口目の前の杯を傾ける。
そういえば、これで一体何杯目だろうか。だなんて揺れる思考で考えるが、すぐに答えが出てこない。
まだ自分で喋れているのだから、大丈夫だとは思うのだけれど。
あまり羽目を外したら駄目だよなと思いながらも、目の前のお酒を揺らす。

「あはははっ!あの『ぜよ』ってやつ?・・・やっぱ、主は変わり者だねぇ。」
「そうかなぁ。良いと思うんだけど。あと新しいもの見ると目をキラキラしてるの可愛い。」
「へーぇ?・・・というか、陸奥守のやつも可哀想だねぇ。」
「・・・?なんで?」

そう次郎ちゃんに尋ねながら、どうしてこんな話になったんだっけ?と思いだそうとしてみる。

「だって、ほら。男ってやつはさぁ、可愛いよりもカッコいいって言われたいもんだろ?」
「あーなるほどー。じゃあ次は、カッコいい所を出していきましょうか。」
「お!いいね、いいねぇ!」

結局、そう囃し立てる次郎ちゃんの声で、さっきまで探していた記憶はどこかに飛んで行って。
いつの間にか陸奥の好きな所が酒の肴になっていた。ということで、自分の中で決着をつける。

「一番初めに来た子ってのもあるけど、安心するんだよね。性格も明るいし、頼れるところがカッコいい。」
「なんかそう言うの聞いたアタシもアタシだけど。・・・妬けるなぁ。」
「やだな、次郎ちゃんだって頼りにしてますよー!美人さんだし!!居るだけで華やかになる。」
「もー!嬉しいこと言っちゃって!おだてたって酒と誉ぐらいしか出ないよ!」
「いやいやいやぁ。次郎ちゃんが、ちゃーんとここに帰ってきてくれれば、それで十分。」
「・・・主ってホント、男前だよねぇ。」

それ、なんだか複雑だなぁと呟いた後、また私はぺらぺらと陸奥の良いところを話しはじめていく。
自分が言ったことを一生懸命やってくれるところ。真剣な眼とか、歩幅を合わせてくれるところ。
仕事終わりに、ぽんぽんと頭を撫でてくれるところ。他たくさん。
私のとりとめのない考えを、笑って聞いている次郎ちゃんに話していく。

「・・・というかむしろ、陸奥だから格好いいし、可愛いし、好きなんだと思うのかなぁ。」
「やだ主、すっごい情熱的!!」

薬研君が私を呼びに来るまで、この話題は続いた。


この身に収まりきらない愛を君に


(・・・大将、もうそろそろ勘弁してやってくれねぇか?)
(え、何が?)
(陸奥守の旦那、顔真っ赤にして蹲っちまった。)
(あちゃー・・・えっと、飲み過ぎ?水もってこようか?それとも部屋まで送った方が良い?)
(あー・・・。多分だが、その話題から離れれば治るんじゃねぇか?)
(あっはっは!!ホントだ、確かに陸奥守は可愛いかもねぇ!!)
(ちょっとアンタは黙ってろ。)

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