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底に穴がありました


だから、どうしてこの人はいつもこうなんだ。

「平腹さん。」
「・・・・・・ほぉ?」

ゆっくりと顔をあげてこちらを見る彼に、頭が痛くなる。
溜息をつきたくなったけれど、それをぐっと押しとどめ、深呼吸してから口を開いた。

「提出された書類がですね、読めないんですが。」
「えー?ちゃんと書いたんだけどなー。」
「・・・実物みます?」

そういって、問答無用で彼の眼前に突きつけるのは綺麗な線が複数付いている紙。
どうせ書類を紙飛行機にしたんだろうと予想は付いたのだけれど。
いかんせん内容を読もうにも読めないのだ。

「紙飛行機は・・・まぁ百歩譲って良いとしてもですよ。」
「あ、良いの?やったぁ!!」
「よくは無い!!・・・じゃなくて、問題はこれです。」
「?」

そう言って見せるのは、渇く前に折られた所為で、いたるところにインクが付いた書類。
こればかりは私でもどうにもならない。だって読めないのだから。

「読めません。せめて折る前にインクの渇きを確認してください。」
「どーしよっかなー。」

『どうしよっかな』じゃないだろうが。仕事しろ。だなんて言えるわけもなく。
この人めんどくさいなとか、平腹さんと二人きりって碌でもない事ばっかだなとか、心の中で文句を言ってみる。
そんな時だった。

「あ!じゃぁこうしよう。」
「なんですか。」
「オレの代わりに名前が書いてくれればいいじゃん!!」
「はい?」
「オレが喋るから、名前が書く!!内容はだいたい覚えてるし、一石二鳥だろ!」

・・・何が一石二鳥なのか。というか、絶対平腹さんが書類書くの飽きただけだろ。
そう言いたかったのだけれど、まぁそっちの方が今から書類を書いてもらうより早いんじゃないか。
と思って、その提案に頷いたのが大きな間違いだった。


底に穴がありました


「・・・あの、なんでこの体制。」
「えー、だって面白いじゃん。」
「な に が だ よ ! ! 」

怒って言っても、後ろの彼はカラカラと笑うだけ。
そんな彼の様子に、さらに私は怒りがこみあげてくる。

「何が悲しくて君の膝に乗らなきゃいけないんですか!!!」

この人と一緒だと、ほんと、碌なことが無いな!!!そう再確認した今日この頃。


そしてこの後、すぐに大声で助けを呼んで無事私は解放されました。
また余談なのですが、肋角さんにこっぴどく怒られてました。ざまあみろ。

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