いい子にして待ってます 今日一日中机の上に置かれていた8個の荷物に、本当に個性が出るよな。と感心してしまった。 「えーっと・・・。」 そう呟きながら、行儀が悪いけれど中身をチラチラ覗いていく。 ずっと気になってたのだ。仕事が終わったのだし、これぐらい許してくれるはず。 と、そう自分に言い聞かせて、目の前の包みに手を伸ばした。 そしてバレンタインのお返しを一つづつ開けていく。 「木舌さんは安定のボンボン・・・ですよね。」 彼はあれか、自分の好きなものを送れば相手は喜ぶよね。ってことなんでしょうね。 そして佐疫くんは・・・。わ、ボールペンだ。使いやすいの欲しいんだよねって話したの、覚えてくれてたんだ。 「しかもこれ、中身が別売りになってるやつ。」 お財布に優しいではないか。流石佐疫くん。とホクホクしながらどんどん中身を確認していく。 谷裂さんは洋菓子の詰め合わせ。お返しをくれたことに吃驚したのは内緒だ。 そして平腹さんからはチロル(1個)・・・うん、君には多くを望まないよ、私は。 むしろ、チロルをくれるのは田噛さんだと思っていた・・・のに。 「どう見てもこれ・・・高い奴だよなぁ・・・。」 女の人が馬に乗ったマークが印象的なチョコレートを頂いてしまった。何でこれをチョイスしたんだ。 私のあげた安い手作りのお返しがこれとか・・・どうしよう来年。 そう頭を抱えようとした途端、視界に入る3つの包み。 「あー・・・そうか、斬島さんのも・・・問題だったね。」 そう言ってがさがさとまだ確認していない荷物を引き寄せる。 残りの3つの荷物は、何を隠そう全部斬島さんのものだ。 「律儀に三倍・・・別に気にしなくていいって言ったのに。」 ちなみに中身を確認したところ、各袋にチョコレート、クッキー、飴が沢山詰まってる。 ・・・あの人は私の話をきちんと聞いていたのだろうか。 そんな事を思いながら、これらを詰め込む袋を取り出していると、こんこんと扉がノックされる。 「はーい。」 とりあえず平腹さんでは無いのは確かなので、返事をして扉を開けると、そこには肋角さんが立っていた。 「何か書類に不備、有りました?」 「いや、きちんとできていた。」 「?なら・・・?」 「・・・まぁ、そこの机に乗っているのと同じような要件だ。」 仕事の話かと思って聞いてみれば、律儀にお返しにきたという肋角さん。 この人の事だから、お高いものが来るに違いない。うわ、本当に来年どうしよう・・・と思っていた時だった。 「・・・名前。」 「はい。」 「用事が無ければで良いが、一緒に飯でもどうだ?」 「え。」 「この前のお返しだ。本当は物の方が良いんだろうが、このところ忙しくて何も用意できてなくてな・・・。」 そんな事気にしないのにと呟けば『俺が気にするんだ。』と返されてしまう。 「でしたら・・・安くて敷居のあまり高くない、肋角さんのおすすめのお店でお願いします。」 「お前らしいな・・・なら、居酒屋で良いか?」 苦笑いをされながら言われた言葉に、私は大きく頷いた。 いい子にして待ってます あと仕事の片付けが残っているので、ここで待っててくれと助角さんに言われたため、足を小さく揺らしながら座って待つことにした。肋角さんが連れてってくれる居酒屋なんて、全く想像がつかないので、どんなところか楽しみだ。こんなホワイトデーもいいかもしれない。なんて思いながら、私は小さく笑った。 (わ、人がいっぱいいますねー!!) (なんだ、ここに来るの初めてか。・・・もし気に入ったなら、また飲みに来るか?) (はい!・・・あ、でもその時は割り勘で・・・。) (わかった、善処しよう。) (え、ずりぃ!名前は肋角さんの奢りなのかよ!!) (・・・なんでお前がここに居るんだ、平腹。) (え?田噛と佐疫に誘われて。みんなで飲み会するって聞いた!!) (・・・・・・あいつら。) back |