ショート | ナノ
被害者は私


こんこんこんと、ドアが開いているのにも関わらず鳴るノック音。

「どうぞー。」

誰が入ってきたのか分かっているから、私は視線を上げずに作業をそのまま続けていく。

「あの、ナマエさん。おやつ・・・です。」

そう言っていつものように、控えめにトレーを置く彼に苦笑しながら「ありがとう」という言葉を口にする。

「イワン君・・・いつもごめんねー。」
「いえいえ、僕がしたくてやっているので。」

そう言われてしまえば、私は何も言うことが出来なくなる。
何となく何か言いたくなって、取りあえずもう一度、ありがとう。と声に出してみた。


「・・・・・・そういえばさ、イワン君?」
「はい。」

今日のおやつは林檎と蜜柑。べつに、それらが気に入らないと言う訳じゃない。
ただ、頻度が問題だ。部屋で何かしていると、毎日と言っていいほど出てくる。
最近は部屋で何かしていることが多くて、その・・・最近少々やばい気がする。

「おやつ・・・もう少し頻度減らしてくれない?」
「え!?な、何か問題有りましたか!?」
「うーん、美味しいんだよ。だから困ってる。」  

この辺がさ。と言って、自分のお腹を触る。・・・以前よりも柔らかい気がする・・・。
と言うようなことを簡単に説明すれば、きょとんとされてしまう。

「え、なら・・・良いと思うんですけど。」
「・・・なんで?」
「僕、今のナマエさんも好きだけど・・・その、僕的にはもう少し柔らかい方が好きです。」
「・・・・・・・・・。」

頬を赤く染めてながらそう言われ、私は何も言うことが出来なかった。

被害者は私


(あ、今日はホワイトデーということで、チョコレートもありますよ!)
(うん・・・私、これからしばらくおやつ控える。)
(え!!??・・・ひ、酷いですよ、ナマエさん!!)
(酷いのはどっちだ!!!)



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