ショート | ナノ
結末、昼ドラ的


「・・・あれ、先輩?」
「ん?名前じゃねぇか。こんな所でどうした?」
「いやいやいや、それは私が聞きたいくらいですって。」

むしろ私はおかしくない。
おかしいのは先輩の方だ、絶対そうだ。
そう思いながら、先輩の方へ近づいて、しゃがむ。
そして、きょとんとこちらを見ている先輩に向けて、口を開いた。

「何で神社まで来て寝ころんでるんですか。しかもカメラもって。」

それは初詣でやる事じゃないって、思っていたんですがね。あれ、もしかしてそう思っていてのは私だけですか?


「あ?・・・あぁ資料用にちょっとな。」
「はぁ、そうなんですか。・・・お疲れ様です。」

資料集めがかなり大変だということを私自身、嫌と思うぐらい知っている。なので資料用と言われてしまえば、私は何も言えない。
・・・むしろこんな所まで来て、わざわざ資料集めをすることに尊敬してしまう。流石先輩。
そう思いながら軽く頷いて見せると、今度は先輩から質問が飛んできた。

「名前、お前一人なのか?」
「あ、はい。」
「・・・着物を着て、一人で?」
「そんな悲しそうなものを見る目でこっちを見ないでください。さっきまでは友達と一緒にいましたからね!?」
「っていうと・・・鹿島か?」
「いえ、他の子たちとですけど。」
「ふーん・・・。」

そうやって先輩の質問に答えを返しながら、周りをパシャパシャ撮る先輩を見ていた。
うん、格好いいけど、傍から見るとすごい怪しい人だな。なんて思ってしまうのは仕方がないと思う。
というか、先輩は何の資料用に写真を撮っているんだろうか・・・。
とか悶々と考えをめぐらせていたら、「名前。」と呼ばれる。

「あ、すいません。考え事してました・・・って、え!?」

ふと目線を上げてみれば、いつの間にか先輩は立っていて、こちらにカメラを向けているではないか。
しかも顔をあげた瞬間、パシャっとシャッターを切る音が。

「は!?」
「よし、ぶれてねぇな。名前、綺麗に撮れたぞ。」
「ちょ、先輩!?」

もうお参りしたんですかとか、先輩一人なんですかとか聞いてみて、あわよくば先輩と初詣を満喫しようとか思ってたのに。(ここに2回お参りすることになるけど、気にしない。)
カメラのことがあった後は、そんな台詞は吹っ飛んでいて。

「なんで私を撮るんですか!?」

その疑問しか出てこなかった。
(そして撮れた写真を私に見せないでほしい。)


正月早々写真を撮られました



そしてその写真をまた見る羽目になるとは、予想だにしていなかった。

「名前ちゃん!!先輩とは行ってるのに、私とは行ってくれないの!?ずるい!!今から着物着て!そしたらすぐに神社行こう!!」
「バカ野郎!今から部活始まんの分かってんだろうが、鹿島ぁぁあぁぁぁ!!」
「・・・ごめん、全く話が見えないんだけど。私今来たばっかなんだ。」

新年あけても相変わらず、この二人は仲がいいなぁ、なんて思っていたら。
すごい勢いでこっちに飛んできた鹿島君から何かを見せられる。その手の中にあったのは、少し困ったように笑う私の・・・私の写真!?

「は!?な、なんで私!?」
「部長が私にって!!『良く似合ってるよな、こいつ』って言いながら見せてくるんだよ!?」

これって何かのいじめ!?と問い詰めてくる鹿島君には申し訳ないが、私の方が虐められている気分だ。
部活に他の人のプライベート写真を持ち込んで、挙句に人に見せるやつが何処にいるんだ。・・・いやここに居るんだけど。
・・・いろいろ突っ込みたいところもあって、褒められているような気がしたけど、それについて喜んでいいのかいまいち解らなかった。

(で、なんで先輩は鹿島君にその写真見せてるんですか。むしろ何で持ってるんですか。)
(ああこれか?鹿島に自慢してやろうと思って。)
(・・・あ、ソウデスカ・・・。)

自慢する意味が分からないんですが。

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