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ブルータス、お前もか!


私は日々日常の中にネタを探している。なぜなら私は月刊SSにて小説を書いている自称:作家とかいうものになるからである。隔月刊発行のため、締切には余裕をもって今まで望んできていたつもりだったが、こうも何度もイベント小説を書いていると正直そろそろネタも尽きてくるというものである。締切が近いのだがどうしようかと思いながら、廊下を歩いていれば、隣のクラスの野崎くんにふいに呼び止められた。

「はい、これ。」
「ん?ああ、お返し?ありがと。」

そう言って受け取ってみれば、なかなか可愛らしい箱を貰った。・・・・・・これを千代ちゃんに見られたら、嫉妬のあまり刺されてしまうかもしれない。いや、想像しすぎか。

「良かったら感想を聞かせてくれ。」
「感想って・・・今ここで食べろってこと?」
「ああ。」

そう野崎に言われたため、ぱかりと開けてみればこれはまた凝ったチョコレート。

「チョコレート・・・凝ってますなぁ。」
「流石に飴やマシュマロは作れなくってな・・・。」
「やっぱりこれ君の手作りか・・・・って、え。作る気だったの!?」

何と言う女子力。こんなのを見せられば、バレンタインに渡した私のガトーショコラが霞む気がする。むしろ霞んだ。堀先輩、まだ貴方に私の手作りを食べさせられないみたいです。

「・・・・・・・・・美味しい。すごく、うまい。」
「!! ホントか!!」
「いや、嘘言わないって。」

悲しいかな、味まで美味い。本当にこの男、何でもできるな・・・だなんて少し嫉妬してしまいそうになる。そしてそう言いながら、私の頭で『・・・相手が実は料理美味いという設定で一つ書けるな。』とか別の事がよぎったのは内緒だ。誰で書こうか・・・そうだな、あのキャラの・・・・・・いけない、いけない。これは家で考えよう。

「ちなみに、名前はこういう状況になったら、どう思う?」
「どう思うって・・・『あー負けた。』とは思うよね。」
「・・・恋愛的なときめきは無い?」
「いやぁ、流石に『この人、私よりもお菓子作り上手だ!!』と思ったときに、そんなときめきは起こらないと思うよ。」
「そうか・・・。」

逆にショックで泣くんじゃないだろうか。・・・千代ちゃん辺りが。と思うけど言わない。
というか、妙に落ち込んでいるのは何でだ。

「名前。」
「え、はい。」
「・・・・・・どうやったら良いと思う?」
「あー・・・どうやったら女子がドキドキするかってこと?」

そう聞いてみれば、コクリと頷く。・・・なんで野崎はそんなにドキドキに拘るんだ。

「そうだな・・・料理を教わるために彼の家に行く。そこでいつもは見れない彼の一面が見れてドキドキ!・・・とか?」
「・・・成程。そして彼の家へ行くということで、そこでもドキドキすると。」
「そうそう。それとか、主人公か相手が怪我でもして、それの手当をして妙に近い距離にドキドキ・・・とか。」
「3、4話稼げるか・・・。」
「ホワイトデー、来年のバレンタインデーも・・・5作くらいストックできるかな・・・?」
「ん?」
「あれ?」

妙に話が合っているのは気のせいだろうか。


ブルータス、お前もか!
 

「あー今回の『恋しよ!』も良かったなー!!鈴木君とマミコが料理するところがドキドキしちゃうよね!」
「うんうん、分かる!!後、最後のマミコの怪我!きっと鈴木君が手当てするって思うんだけど、続きが気になる!」
「・・・・・・。」

演劇部へ行く途中、その話を聴いた私は何だか、先日の事を思い出してしまう。

「・・・まさか、ね。」


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