砂糖は多すぎるくらいで丁度良い ケーキや御馳走を用意して待っていれば、帰宅したスモーカーさんに呆れられた。 「・・・ったく、誕生日ごときで喜ぶような年じゃねぇんだが。」 「でも、私がお祝いしたいんですー。」 「あぁ、そうかよ。」 もう勝手にしろ、と言わんばかりの彼に、なんだか自然と頬がむくれてしまう。 「喜んでくれなくったって、『ありがとう、ナマエ。』位言ってくれたっていいと思うんですけど。」 「・・・おれが悪かった。すまねぇな、ナマエ。」 こっちだって朝少し早く起きたり、会社から急いで帰って準備したんだ。 ・・・・・・少し恩着せがましかったかもしれないけれど、少しはお礼を言ってほしかった。そのことを少し醸し出しながら呟いてみれば、子供にやるように頭をがしがし撫でられる。 「もう少し優しくしてください―。」 「その割に喜んでるじゃねぇか。」 「えへへへへ・・・ばれました?」 「バレバレだ。」 緩んだ頬を軽くぺちぺち叩かれる。私の頬を叩いている彼が、何となく嬉しそうなので、私もなんだかさっきよりも嬉しくなった。 「・・・・・・おい。」 「はい?」 その後、一緒にご飯を食べていれば、少し難しい顔をしたスモーカーさんの顔が見えた。何だろうか、私、何かしただろうか。いつもと違って歯切れが悪い言い方をしているスモーカーさんを見れば、これまた変にソワソワしているのが分かった。 「その、何だ。」 「はい。」 「世の中じゃあ、今日は菓子会社の陰謀の日だろ。」 「・・・せめてホワイトデーって言って下さいよ。」 ひねくれた言い方しか出来ない彼に、小さく苦笑してしまう。まぁ、そんなところも好きなのだけれども。 「それでだな。偶には・・・おれからも何かやろうと思ってだな。」 「いやいや、何言ってるんですか。今日はスモーカーさんのお誕生日なんですから、大人しく享受されてください。」 「されっ放しっていうのは、おれの性に合わねぇんだよ。」 そう言いながら、ガシガシと自分の頭を掻いている彼を見て、やっぱり少しいつもと違うと思ってしまう。何処がどう違うんだ。と言われてしまえば、何も言えないのだけど。 「ほらよ。」 「わっ!!」 急にぽんと投げてきたのは長細い小さな箱。包装も何もされていない(蓋が開かないように、セロハンテープで止めてあるけど)その箱は、中で小さくコロコロと鳴った。 「・・・中身は?」 「勝手に開ければいいだろ。」 そうぶっきらぼうに言っているけど、妙に落ち着きがない。自分の携帯を開けたり閉じたりするのを繰り返している。らしくないことをしているのが、気恥ずかしいんだろう。そう思ってしまえば、顔が緩むのを止められない。 「ありがと。」 「・・・さっさと開けろ。」 そう言ってそっぽを向くスモーカーさんの様子が面白くて、また小さく笑ってしまった。 砂糖は多すぎるくらいで丁度良い 箱を開けてみれば、3つに仕切られていた箱の中身に、驚いた。左右は丸いチョコレート。きっとトリュフだろう。いやそんなことよりも。 「これって・・・え!?」 「・・・・・・一個味見したからな。真ん中に何もねぇって言うのは締まらねぇだろ。」 「いや、え、あの待ってスモーカーさん、これって。」 甘かったとぼそりと呟くスモーカーさんに、何か言いたいんだけど、何も言えない私。一回開けた形跡があったのはその所為かとか、頭によぎったけど、もうそれどころじゃなくて。 「ナマエ、さっさと嫁に来ちまえ。」 それとも何だ、気に入らねぇか?なんて言うスモーカーさんに、ただただ首を横に振ることしか出来なかった。彼の誕生日に私がこんなに幸せになって良いのだろうか。左の指にきちんと納まったそれを見て、幸せそうに笑うもんだから、どうしよう、涙が止まってくれない。 back |