マスとハスと食いしん坊 「ナマエ ―！バレンタイ「はい。」サンキュー！！って･･･なんだこりゃぁ！？」 「何って･･･。」 そう言って、確認のためにトリコの手の中にあるのをじっと見る。 ･･･見えるのは、マスとハス。 「うん、あってる。マスとハスだもの。一瞬間違えて渡したかと思ったじゃん。」 「いや、よーく考えろ。マスとハスだぞ？今日はバレンタインデーだぞ！？」 「知ってるよ、それぐらい。」 「普通はチョコレートが渡されるところだろ、ここは！」 「よし、そんなルールは自分が粉砕してくれる。」 「こえぇよ！」 そう言いながら、不満そうに手に持っているものを見るトリコ。 ･･･全く何が不満なんだ。 「チョコレート川を泳ぐ鱒で、上質なカカオマスが採れるカカオマス。」 「全体がウエハースで出来てる蓮のウエハス･･･だろ？」 「分かってるじゃないですか。」 「いや、分かるけど。分かっているけどなぁ･･･。」 分かっているなら、何でそうも不機嫌なんだ。何が不服なんだ。 そう思って、その気持ちを言葉に乗せて伝える。 「だーかーら！ここはナマエ の手作りチョコが来るっていうのがお決まりじゃねぇか！！」 「どうしてそんな思考回路につながるのか、全く分からないですけどね！！！」 「だって普通食材がそのまま来るとか思わねぇだろ！？」 「良いじゃないですか。ぴちぴち新鮮ですよ。」 「そのせいで、オレの顔に尾ひれが当たってるんだけど。」 「活きが良いんですよ。･･･それともトリコはアレですかね？」 「･･･ん？」 不思議そうな顔をしてきたので、私はそんなトリコにも分かるように話し始める。 「じゃぁ、その腕にある大量の食材を、私に返してくれるってことで良いんですかね？」 「いや！美味しく頂かせていただきます！！」 ･･･返事がすごく速かった。 そのことに、やっぱりこの人は『食いしん坊ちゃん』と言われるだけあるなぁ、と思ってしまった。 マスとハスと食いしん坊 （なぁ、小松にこれ渡すのは良いけどよ。小松に対して多すぎるだろ。大丈夫なのか？） （え･･･！！小松少年には、きちんとした既成品を送るに決まってるじゃん。何言ってるの。） （はぁ！？オレと小松の差は何！？） （少年は少年。トリコはトリコ。量と職業と食生活を見て考えないとダメでしょ？） （いや、フツーに考えてダメだろ！おかしい、おかしい！！！） （自分はそのトリコの言う『普通』を打ち破ります。） （･･････。） back |