ショート | ナノ
lost and found(1)


無造作に散らばる、宝石の沢山ついたネックレス。
ピンクゴールドのお揃いのピアス。
ブランド物の、胸の空いたきらびやかな服。
彼の好む派手な下着。 
来るたびに置いていく、札束は床に舞っていた。

「また、来る。」
罪滅ぼしのつもりなのか、彼の愛情なのか。
それは私には解らないし、彼は示そうともしてくれないから解らない。
ただ、去り際のあなたの一言だけがいつも甘い。

「よく、わかんない。」
彼という男も。 自分という女も。
初めはなにもかもが、嬉しかった。
別に金が目当てだったわけじゃない。でも、彼がくれた物だから。
そうやっていると、部屋には物がだんだん溢れかえるようになった。
まるで、倉庫みたい。
まるで、私のココロみたい。
ごちゃごちゃな、無機質なものが、散らばって、ぐちゃぐちゃで。
部屋の形すらも、もう解らない。
積み上げられたコートは皺が寄って、変わり果てている物さえ有る。

「もう、よくわかんないよぉ、」
欲しいのは初めから、こんな無機質な物ではなく、貴方だったというのに。
足下に転がる縫いぐるみも、貴方の代わりにはなれない。
「ド・・・フラミンゴぉ・・・っ、」
縫いぐるみは泪を布に染み込ませるだけで、抱きしめてはくれない。

"いらねぇ物は、捨てればいいだろ"
"幾らでも、欲しいのは買ってやるから"

違うの。
欲しいのはそんな言葉じゃないの。
ただ、抱きしめてくれる腕が欲しかった。
優しく囁いてくれるだけで良かった。

ぐるりと見渡す部屋。
異質なのは、この積み上がった"モノ"ではなく、きっと私。
「私は、本当の貴方を見つけられない。」
足下に散らばる札束を適当なバッグに入るだけ入れて、部屋から抜け出す。
"さよなら"は、彼が見つけてくれるから。


ロストエンファウンド
 

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