ショート | ナノ
展開、少女漫画的


「っはい、先輩!どうぞ、これ!!」
「・・・おー、悪いな。」
「やったー!私のもあるよね?雅ちゃんの!」
「・・・・・・鹿島君には無いんだけど・・・。」
「えー!?」

だってしょうがないじゃないか。
そう思いながら、彼女の鞄の横にある大きな袋を見る。

「だってもうたくさん貰ってるみたいだし・・・。」
「え、ちょっ!!雅ちゃんのチョコレートはまた別なんだって!!」

今日はあの日。そう、バレンタインデーなのです。


「じゃぁ、タッパの中にある奴から適当につまんでよ。」
「・・・ねぇ、何で私だけこんな扱いなの?」
「いや、他の・・・そうだな、同じクラスの男子と同じ扱いだよ。」
「それってきっと名前が名前覚えてない奴らと同等の扱いって事だよね!?」

名前の作ったお菓子は美味しいけどさぁ・・・と言いながら、少し不服そうに食べている鹿島君。だって急にそんなこと言われたら仕方がないじゃん。と突っ込みながら、いつもカバンを置いている場所に歩いていく。

「考えてみなよ。それだけ貰うんだから、要らないって思うじゃん。」
「うー・・・確かにそうかもしれないけどさ!同じ演劇部員の子からのは、また別だって!!」
「鹿島、それ何回目だ?・・・いい加減諦めろよ。」
「先輩は名前ちゃんからチョコレート貰ってるから、そんなこと言えるんですよ!!」
「・・・・・・そんなもんか?」
「そんなもんなんですー。」

首を傾げている堀先輩といじけている鹿島君を横目に、仲良いなぁ・・・なんて思ってしまう。まぁ、私なんて所詮ただの部活仲間だからなー。逆にこっちがいじけたい位だよ鹿島君。堀先輩とそこまで仲がいいなんて本当にうらやましい。理想的にはこの日にあやかって告白とかして、都合よく両想いでとか・・・・・・。

「・・・少女漫画とかじゃないからなぁ・・・難しいよなぁ・・・。」
「え、まさか名前ちゃんも男子高校生のバイブル読んでるの!?」
「何それ。そのバイブルはよくわからないけど、漫画だったら少年漫画をよく読むかな。」

あ、でも。読もうと思えば普通に読めるけどね。と補足しながら、部活道具の金槌とかを引っ張り出す。浮かれずに今日も、堀先輩の足を引っ張らないように頑張らないとなー。なんて思っていた時だった。

「っていうか、先輩だけ包装が綺麗!!・・・って、あ、そっか。手作りは食べないんでしたっけ。」
「あ?・・・あー手作りは、ちょっとな。」
「名前ちゃんのお菓子美味しいのに先輩だけ市販とか、勿体ないですねー。」
「・・・・・・。」
「あれ、先輩?」
「名前のなら、別に手作りでも良かったけどな。」


その言葉を聞いた途端、私のすぐ近くで激しい物音が聞こえた。
その音の原因が、私が引っ張り出そうとしていた工具たちだったと気づくのは、もう少し後の事だった。


バレンタイン的な何か


(え、ちょっと名前ちゃん!?)
(おい名前!大丈夫か!!足とか、怪我ないか!?)
(え・・・あ・・・はい、だ、大丈夫です!!)
(おい、顔真っ赤だぞ・・・?わりぃ、鹿島。俺ちょっと保健室まで名前連れてくわ。)
(い、いえ!!大丈夫です!!足に落ちたかもしれませんけど、痛くないですから!!)
(・・・・・・先輩、名前ちゃんを保健室までお願いします。もしかしたら、熱があるかも。)
(よし。じゃあ俺が帰ってくるまで、ちゃんとやってろよ。)

でもこの後、堀先輩は親しい人のなら手作りでも食べられるという話を聞いて、自分を殴りたくなった。

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