結局二人は仲良くなれない 真っ白いさらさらした砂糖を一匙、もう一匙。 透き通った赤茶色に揺らめく紅茶の中に淹れていく。 「おい、ナマエ。ミルクは入れないのか?」 「私、珈琲には牛乳入れるけど、お茶には牛乳を入れない主義なの。」 「ミルクティーも美味いんだがなぁ・・・。」 そんな呟きを聴きながら、私は置いてあるスプーンを使ってかき混ぜる。 そしてアーサーがまだ何か言っている声をBGMに、かちり、かちりと少し柔らかい陶器の音が響くのを聴いていた。 「おい、ナマエ!俺の話を聞いてるのか?」 「うん、きいてる、きいてる。」 「・・・・・・お前絶対聞いてないだろ・・・。」 ったく、何で俺の周りの奴等はどうしてこうも話を聴かない奴らばっかなんだ・・・。と言う彼が、何だかすごく可哀想で。 「・・・・・・お疲れ様、です?」 「お前らのせいでな!!」 気を使って、労りの言葉をかけてみたつもりなのだけれど、彼は皮肉にとらえてしまったらしい。 ふとしたこういう所で、国民性っていうものが出てくるんだと、何となく思ってしまう。 「ま、まぁでも・・・別にアレだ。仕方ないから世話の一つぐらいは焼いてやるけどな。」 「うん、ありがとう。」 「そういうわけで、紅茶のお供として俺特製スコ「あ、ごめん。それは要らない。」・・・なんでだよ!!!」 そこはありがたく貰う所だろうが!!と言われ、凹んでいる。それももの凄く。 だけど、事実なのだから仕方がない。 そこで私の中の優しさを使ってしまえば、後に残るのは私の屍だけだろうから。・・・二人のためだと思う、うん。 そう思っていると、ふと頭をよぎるのは彼の弟的存在なあの子。 あの子は不味いとか言いながら、もしゃもしゃ食べていたっけ。 「・・・食べてほしいんだったら、アルフレッドを呼べばいいと思うんだけど。」 「誰が呼ぶか、あんなやつ!!呼んでも来やしないしっ・・・・・・!!」 「あ、一応呼んだんだ。」 「そ、そりゃぁ、お前、一応礼儀としてだなぁ!!」 「ふーん・・・紅茶は美味しいんだから、飲みに来ればいいのに。」 「なぁ、ナマエ。紅茶『は』ってどういうことだよ・・・。」 「まぁいいじゃない。・・・でも何で来ないのかな?」 そう独り言を言えば。あいつは紅茶より珈琲派だからな。紅茶は飲みたくないんだと。とぶっきらぼうに返事をされる。 どちらかというと、私の中のアルフレッドは珈琲よりもコーラはのような気がするのだけれど。(もしくはシェイク。) まぁいいか、なんて適当に自己完結させてしまう。 「私は美味しく飲めれば、珈琲だろうが紅茶だろうが飲めるんだけど。」 「ナマエ!お前、そんなこと言うんじゃねぇよ!!紅茶の方が断然良いだろうが!!」 「きっとそれを聞いたら、アルフレッドが珈琲の方が良いって反論してくると思うよ。」 「あいつは味音痴だからな!!この紅茶の良さを分かってねぇんだよ。」 「・・・・・・うーん、ごめん。返事にちょっと困る台詞かな、それ。」 そう言いながら、私はカップを持ち上げる。そして一口。 「まぁ、今の台詞は置いといて。何だかマザーグースみたいね。」 「あ?」 「ほら、あれの中で姉さんのベティと仲違いした話あったでしょ。その理由も珈琲と紅茶から始まったじゃない。」 「あ、あぁ・・・そう言えばそうだったな。」 「やっぱり好みが違うと、敵対心持っちゃうのかな。好みが一緒だったら喧嘩もしないだろうにね。」 そう言い終わってから、一口。アーサーがなにも言わないので、また一口。 何か悪いことでも言ったかな。とちょっと考えているときに、小さく、目の前の彼は口を開いた。 「好みが合いすぎても、困る。」 「なんで?」 「・・・取り合いになるからな。」 「?・・・・・・ふーん、そっか。」 何だかよくわからないけど、大変なんだなと思った、ある昼下がりのお茶会。 結局二人は仲良くなれない 「あ、ナマエ!何で君がこんな所に居るんだい!?・・・どうせアーサーが呼んだんだろうけどさ。」 「・・・悪いかよ?」 「あのねアーサー。前から言ってあったと思うんだけど、ナマエは俺のヒロインなんだから、ちょっかいかけるのを止めてくれないかい?」 「いつ、ナマエがお前のものになったんだ、馬鹿!!!」 突然来た来訪者との言い合いを、紅茶片手に観戦する私。 「・・・結構仲、悪くないと思うんだけど。」 そう呟いてから、このせいで矛先が私のほうに来ると思い、少し焦る。 けど、目の前の二人は私の少し大きな独り言は聞こえなかったらしい。 未だに言い争いを続けている彼らを見ながら、自分のカップに紅茶を注ぎ足すことにした。 back |