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良く会うなと思ったら


3時間前は服屋の前で。
その約30分後に商店街の一角でばったり。
その後にもまた交番やスーパーや酒場、道ばたで遭遇している。
結構頻繁にすれ違い、これならすれ違い通信が何回も出来ているだろうなぁ。なんてどうでも良いことを考える。
そして私が彼の横を通り過ぎようとすると、また今までのように腕を掴まれる。

「おい。」
「はい?」

今日何度もやっている事だけれど、未だに慣れない。いきなり腕を掴まれるなんて、そうそう慣れるものじゃない。

「・・・で、何処に行きたいんですか。」

かつ、目の前の人間の顔が仏頂面って言うのも要因の1つだと思っている。
自分も怖いと言われたことがあるので、強くは言えないけど。自分も気をつけようと思った。はい。

「コンビニ何処だ。」と言う緑頭の彼は、自分と同じクラスになったことがある。
名前は・・・ゾロ。で良かったと思う。苗字は覚えがない。呼びにくそうだな。と言うイメージは残っているけど。
まぁ、そんな感じで。彼も私のこと忘れてるんじゃないのか、と思いながら、近くのコンビニを説明していく。

「向こうの信号を2つ行って左に曲がればあるよ。」
「向こうにいきゃぁ、良いんだな。」

よし、分かった。ともう何度目か数える気もないけど、そう言って、歩き出した。

「ありがとな、ナマエ。」
「え。」

何、覚えてたんだ。名前。とかいう言葉が頭を過ぎる。
そして、驚いた。

「ねぇ!」
「あ?・・・何だよ。」

振り返ってそう叫んだ私に、彼は不思議そうな顔をする。
今日、色んな所を案内させられた。酷いときには連続で同じ場所を聞かれた。
それも、今だったら何となく分かる。 
 
「そっちに行くんじゃなくて・・・こっち、です。」
そう言うと顔を赤くさせて、ズカズカと私の方へと近づいて、通り過ぎた。

「・・・・・・まいごさん、かな?」

そう言えば極度の方向音痴。と誰かが言っていた・・・ような気がする。


良く会うなと思ったら 


まだ言動とか、顔とか・・・怖いと思う部分もあるけれど。
意外な一面が分かって、少し、親近感が湧いた。

(そこを左ですよー・・・あの、そっち右ですから。)
(あ!?・・・分かってるっつーの!!)


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