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サヨナラ告げた男の行方


綺麗に期間までに揃えられた書類、風邪で一週間休んだあと出てきたときに黄猿大将から告げられたのは上司の遠征の報告だった。

書類かたづけていくのは長い遠征前にはよくあることなのだが、なにか違和感を感じていた。黄猿大将はニコニコと俺の様子を見にくるし、青雉大将あての提出期間の無い書類が最近来ていない。

おかしいなぁと、そのあと2週間を過ごし、赤犬大将が遠征から帰還。酷い凍傷を負っているという。まさか、まさか、まさか。

嫌な予感を抱えながら机を漁り、引き出しから見つけたのは手紙。

「解ってた、よ」

貴方が、どうにかしなきゃって思ってた事も。赤犬大将との関係が最近悪化していたことも。そしていつかこうなるだろうと言う漠然とした憶測も。でもそれは海軍内で派閥ができて割れるとか、そのくらいの観測だったのに。

「普段ダラけてる癖に、こう言う所だけ、」

負けるの解ってた癖に。だってそうじゃ無ければ、既にセンゴクさんに辞表提出してることもないだろう。

「馬鹿、」

久しぶりに泣いた。涙が止まらなかった。気づかなかった俺にも、勝手に出て行った男にも。ぐっと拳を握りしめた所で、爪の間に赤が差し込むくらいで、目からこぼれ落ちる雫は止まってはくれなかった。

男が残した手紙を濡らしていれば、後ろから間延びした声がして、顔を上げるとすぐ近くに黄猿大将の顔があった。

「気がついちゃったんだねェ、」
「知っていたなら何故、止めなかったんですか。」
「愚問、だねェ・・・!!」

気付かなかった俺に、大将を詰る事など出来はしなかったのだが、口から出た言葉は留まることなく流れ出すばかりだった。

「ナマエは気付きもしなかった癖に良く云うよねぇ、それか、気付きたくなかった?」

核心をぐさりと突いて来る黄猿大将に言葉を詰まらせ、さらにきつく拳を握りしめた。

「で、どうするの。」
「・・・今日付けで、辞めさせてください。」
「だと思ったよ、続けるならわっしの所に勧誘しようと思ったんだけどォ・・・」
「俺の上司はどうしようもないあの人じゃないと務まらないもんで。」

にこりと笑いかけてやれば、悪い顔してるねェと同じように笑った黄猿大将が肩を叩いた。

「クザンが変な事するようだったら容赦しないからねェ、君もだけどォ・・・」
「解ってますよ、」

ただ、今は会って話がしたいだけですから。

素直に心からそう言えば、近くまでは送ってあげるよ・・・と黄猿さんがなんともいえぬ顔で息を吐いた。


サヨナラ告げた男の行方


「お久しぶりです、クザンさん。」
「あらら、懐かしい顔。」

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