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計算していないなら余計に


スモーカー!!とか突撃してきては勢いよく俺の海兵服を破るこの男は、俺の同僚のナマエだ。向こうから走ってくるのをみる度に、着替えはあったかどうかを考えてしまう俺はそろそろナマエに文句を言ってもいいのかもしれない。

「スモーカー!!」
「・・・いい加減に、しろっ!!」

自身の体ごと気化させれば、飛びつく衝撃を殺しきれなかったナマエが顔から床に突っ込んでいった。あいつ本当学習しねぇなと足元を見やれば、少しだけ引きちぎれたタンクトップの端がナマエの手に握られているのが視界に入って気が滅入った。

「海軍辛い、スモーカー成分が足りない!」
「意味がわからねぇ、俺の成分ってなんだ。馬鹿野郎が。」
「スモーカー成分っていうか、足りてないんだよ、補給させて。」

足に縋り付くようにまとわりつく男を軽く蹴飛ばせば、往生際の悪いナマエがら潰れた声がする。

「歩きづらいんだよ、離せ。」
「補給してるんだもん。」

太ももまで巻き付けるように触る手つきに溜息。どんな意図かなんてわかりたくはないが、こいつは同性愛者ではないくせに”そういう意図”で俺に接触を図ってくる。いつまでたっても慣れないのは男として仕方のないことだろう。

「・・・離せ。」
「・・・・・・。」

それでも離れない男に溜息を吐いて、そのまま引きずって自室に戻る。兎に角、敗れてしまった服を着替えなくてはいけないとクローゼットを開いたのだが、ここ最近忙しくて休暇を取る暇が無かったせいか、着替えのタンクトップが一枚もなくなっていた。

「ナマエ」
「そんな怖い顔しないでってば。」

恐い顔をしてるに決まっているだろう。こいつは毎回毎回懲りもせずに俺に突撃をかましてはそれに見合った数だけ服を駄目にしているのだから。

「・・・服については、弁償するし。」
「そもそも破らないという選択肢はないのか。」
「・・・無い!!!」

胸を張りながら笑顔で答えた男に、溜息を吐きつつ太ももを撫でる手を上から叩いた。


計算していないのなら余計に


後日、海軍駐屯部にて。いつも通り走ってきたナマエが俺にぶつかる前に珍しく勢いよく停止した。どうせ破られるなら、と今日はタンクトップを着てきていないのにナマエもどうやら気が付いたらしい。

「・・・着てなきゃ、破られもしねぇだろ。」
「え、ちょ、スモーカー?! えっ、しまいなさい!!」

真っ赤な顔をしてジャケットの左右を引きチャックを閉めるナマエ。その行動が先日までとは大きく違っており、俺はその行動に目を丸くした。

「・・・そうか、これなら破らないのか。」
「スモーカー、これは駄目。俺の分が減る!!」
「安心しろ、お前の分なんて端から無ェよ。」
「酷い!!」


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