ショート | ナノ
恐竜と赤頭巾


「・・・ナマエ。これは何の真似だ。」
そう、困ったように眉間に皺を寄せてみるも、彼女には効かないみたいで。
「えぇぇぇ・・・私に言わないで下さいよ。・・・色々あって、やらなきゃいけないんですから。まぁ、ドレークさんは緩めに付き合ってくださいよ。」
逆にナマエに困った顔をされてしまい、おれはどうすることも出来なくなってしまう。
「・・・まぁ、大きな独り言と思って、聞き流してくださいよ。」
苦笑いしながら近寄ってくる彼女を見て、もうどうにでもなれと心の中で呟いた。


  恐竜とあかずきん


「・・・えーっと、すいませんが恐竜になっていただけませんか?」
「・・・・・・今か?」
「え、た・・・多分?「此処は船の上だぞ。」・・・そうですね。」
沈む算段まではしていなかった。だからといって・・・やらないのはしゃくに障る。
「罰ゲームでドレークさんと赤ずきんやって来いって言われてて・・・。
「ナマエ。、どんな罰ゲームだそれは。」
「船のみんなでやってたポーカーの罰ゲームです。」
よくわからないけれど、とりあえず演劇のような事をすればいいと言われている。そう呟けば、彼は案の定ため息を小さく付いた。(何か本当に申し訳ない。)
「全部恐竜にはなれないが・・・それでも良いなら構わない。」
「!・・・すいません、ホントありがとうございます!!」
そう言って、私の我が儘のために恐竜になって貰うことになった。(本当にすいません。)

手としっぽ辺りを出して貰って、いざ、やろうと思うのですけれども。
「すいません、赤ずきんって何ですか?」
「知らないのにやろうとしたのか。」
「あまり外の物語とか知らないので。あ、でも大丈夫ですよ!絵本なる物を借りてきたので!!」
表紙に題名が書いてあるその本をドレークさんに見せると、凄く不安だと、呟かれた。
「忠実にやれば、何とかなりますって。・・・あ。あったあった。」
絵本を左手に持って、そこに書いてある文章を読み出した。
「『ドレークさんの耳は』・・・普通ですよね?」
「・・・そこまで大きくないと思うが。」
「ですよね。じゃぁ飛ばして、『ドレークさんの目はどうしてそんなに大きいんですか?』」
「・・・『ナマエの顔を良く見るためだ。』」
絵本を覗き込みながら、そう言うドレークさんはとても優しい人だと思う。こんな私の我が儘に乗ってくれるのを感謝しながら、私はドレークさんに笑いかけた。そしてドレークさんが笑い返してくれたのを見てから、次のページを捲った。
「えーっと、『ドレークさんの口はどうしてそんなに大きいんですか?』・・・って、え。」
「ナマエ、どうかしたか?」
「いえだって、これ、食べられてるじゃないですか。」
そう言って指さすのは、主人公が狼に食べられているシーン。
「食べられてるな。」
「・・・・・・ちょっと陸に降りて恐竜になって貰って、口の中に私を含んでから、すぐに吐き出「どんな捕食シーンだそれは。」
やらなければ良いだろうと、諭されたけれど、何となく私は反論してしまう。
「だって、忠実にやりたいじゃないですか。途中からですけど。」
「狩人でてくるが。」
「じゃぁ・・・食べられるところまでやれませんかね?」
「・・・・・・まぁ、可能じゃないか?」
そう言って、さっきよりも私に近づいたドレークさんは、あくどそうに笑いかける。 
「じゃぁナマエ、怖いだろうから目をつぶっていろ。」
「あ、此処で出来るんですか?」 
「少し違うが・・・それっぽくなるように努力する。」
い、痛くしないで下さいね。と言うと、大丈夫だ。と目を細めて笑った。そして、私が目をつぶったちょっと後に。
噛み付かれたような、キスを、された。


狩人は、此処にいない。
 

「あー船長、上手くやってると思うか?」
そう話しているのはナマエと勝負をしていたドレークの船員たち。
「さぁ?・・・ただ早くくっついて欲しいのは確かだよな。」
「まぁそうだ、見てるこっちがやきもきするしな・・・。」
そう話す船員たちの声は、波に攫われていった。

後の物語は、2人しか知らない。


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