ショート | ナノ
響く歌声、オーケストラ


毎度の事ながら、思う。

「フェリって良く喋るよねー・・・。」
「え、そう?ナマエもそう思ってたの!?」

『も』と言うことは、誰かに言われたんだろう・・・。(きっとルートだろうけど。)

「で、でもっ!俺が黙っちゃったら、世界が滅びるんだよ!!」
「あー・・・それは、とても嫌だな。」

でしょ!!と何故か誇らしげにし始めたフェリシアーノを横目に、私は仕事をすることにした。

「ねぇーナマエー。ってばー。」
「どうしたの。」
「ねぇ、ナマエ。ナマエー。」
「だから、どうしたのって。」

そう言って紙から視線を外せば、ゴロゴロと転がっているフェリの姿が。(そして『ヴェー』と鳴いている。)

「・・・どうしたの、ホントに。」
「構ってよー。」
「いやいやいや。私、今仕事中だから。」
「じゃぁ、何か喋ってよ!!」

話題提供の苦手な私に、どうしろと言うんだ。

「ねぇー。ねぇってばー。」
「話題って言われても・・・困る。」
「だったらナマエのこと!俺、ナマエの昔のこととか聞きたい!!」
「昔って言ったって・・・フェリが小さいときから、結構良く会ってたんだから分かってるでしょうが。」
「じゃ、じゃぁ、ナマエの好きなこと!」

・・・好きなこと?と聞けば、目の前の彼は、うん。ナマエの好きなこと。・・・あ!物とかでも良いよ!!と言っている。どうしてこんな流れになってしまったんだろう。

「だってさ。俺がいつも喋ってるでしょ?さっき話してて思ったんだ。これってビョードーじゃないよねって!!」
「・・・えーと、つまり。何時もフェリだけが自分の好きなこととか話してるから、平等じゃない・・・と。」
「そう!それだよー!!」

そうニコニコしながら話すフェリに、少し頭を抱えたくなった。

「好きな子にさ、俺の好きなこと分かって欲しいと思ってたんだけど。」

好きな子の好きなことを知らなかったら駄目だったって気付いたんだ!!俺、偉いでしょ!ちょー凄いでしょ!!と捲し立てて爆弾発言を言い放った彼。はいはい。だなんてあっさり対処することが出来なくて。私が話し出すのを待っているのか、喋ることをやめて、歌い始めた。・・・・・・ルート、助けてくれ。と心の中でSOSを出したけど、届いていないんだろう。

「ナマエの話を聞く時は、俺、ちゃんと静かに聞いてるから!」と言われたら、もう、逃げ場が無いじゃないか。


響く歌声、オーケストラ


(・・・・・・歌ってるところ悪いんだけど。)
(おっ!ナマエが喋る気になった!!)
(世界を滅ぼされたくないので、残念だけど、私は何も話すことが出来ません。)
(あ・・・あー!!駄目、違う!世界滅びないから、ナマエー!!)


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