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埋め合わせは十二分に


昨日はカクの誕生日だった。解ってはいたのだが、ジャブラと一緒に行った他の任務で思ったより手こずってしまい、電伝虫でおめでとうすら言えなかった。任務中だから今年も祝わなくても良いとは言っていたが、そんなのはきっと良くない。

任務から早速帰って念入りに体から血の臭いを落として着替えて。いつもの電伝虫を手にとってズボンのポケットに押し込んだ。

「さて、」

海列車の最終は過ぎてしまっているし、と思ってある男の能力を思い出し、受話器をとってダイヤルを回す。

「カクの所まで行きたい。」「カクなら今、俺の店で他の職長どもと宴会中なんだが。」
「・・・ブルーノ、」

じっとりと名前を呼べば、解ったよ、と返事が返ってくる。その返事を聞いて、電伝虫を切り、暫く待っても扉が出現する気配がない。プレゼント片手に机の上に俯せる俺はさぞ酷い顔をしているだろう。そりゃあ国一つ潰してからその足でそのまま帰って来たんだ。これでカクの笑顔でもなければ充電が切れても仕方ない事だろう。

「うー、ブルーノ・・・」

早く俺にカクをプリーズ。じゃないと長官を怒りに任せて絞め殺しに行ってしまいそうだ。なにせ誕生日に間に合わなかったのは元はと言えば、長官のせいなのだから。

「なんじゃ、わしじゃなくてブルーノで良かったんか?」

ばっ、と声が聞こえた瞬間に机から頭を起こして、背後に体の向きを直す。

「カク・・・!」
「ん、話はブルーノから聞いとる。」
「カク!!」
「あんまり潜入してからは会えとらんからの、なつかしいわい。」

ぎゅうぎゅうと抱き着けば、苦しくない癖に苦しいなんて笑いあう。

「そんで、まだ今年は聞いとらんな。」
「・・・カク、誕生日おめでとう!!」
「ございました、じゃろ。もう今日も終わるからだいたい2日遅れじゃ。」

遅刻した分プレゼントは期待しても良いんじゃろうな、なんてクリクリした目を瞬かせて言うカクに笑いながら手の平の上の箱を手渡す。

「ん、それなりに良いやつだぞ、それ。」

仕事用にも使えるものは、すぐに壊すか汚してしまうが、機能性が無いものはカクは余り好きじゃないらしいから。仕事じゃなくて普通の休みに使える物を。ちょうど今は潜入中だから良いだろう。

「新しい帽子。」

仕事用には使えないようにわざと明るい色を選んだ帽子を箱から開けて「これは汚せんな、」なんて眩しそうにカクは笑った。


埋め合わせは十二分に


「で、明日はわしは休みなんじゃが。」
「・・・!!」

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