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紅蓮の空2


(これ)の続編


海軍の追っ手を振り切って、一休みしようと辿り着いたのは綺麗なエメラルドビーチだった。人が居る気配はゼロ。恰好の隠れ場所だ。ただし猛獣などはいるかもしれない、と船員には船に残るように指示し、能力を発動させて空に舞い上がる。

島の上空を旋回中に視界にちらついた赤色。キラキラと太陽の光を浴びて燃えるように光る炎のような羽の鳥。俺と同じ能力者かとも思って警戒したものの、その鳥はこちらに向かってくることもせず、上空をすごい勢いで火山口に飛んで行ってしまった。

「なんだよぃ、一体・・・」

ぐるりと島に強そうな猛獣が居ないことを確認して船員に森で野営の準備をさせている間に、先程の鳥を探しに行くことにする。ほんの好奇心と探求心。それにそれなりの理屈をつけて上昇し、先程あの鳥の消えた火山口まで飛ぶ。上から見ていれば、やはり鳥はなにか警戒をしながら火山口あたりでうろうろと目を泳がせながら蹲っていた。

「・・・!!」

近くで見れば見るほど、その赤はめらめらと燃える炎のようで。最近喪った末の弟の面影をそこに思い出し、自嘲した。ぶわりとこちらを見つめておびえるように威嚇で羽を広げた鳥の足元には淡いグリーンの丸い卵がざっくりと数えるだけで5つほど転がっていた。

「・・・なるほど、卵孵してんのかぃ。」

思わず人の言葉のまま呟けば、炎のような鳥はこちらをより警戒したように見た。人の言葉でも理解できるのだろうか、疑問はいくつも降って沸いたが相手が人の言葉で返事をしない限りわからないことだ。

「卵をどうこうしようとは思ってねぇよぃ。」

言葉がわかるのかどうかなんて分かりはしなかったが、そう極力言葉に柔らかみを持たせて言えば、少しだけ肩の力が抜けたように見えた。それ以降、奴はその場から動ことうとしないものの、ちらりちらりとこちらを覗く黒い瞳だけがものいいたげに揺れている。

「・・・なぁ、」

俺の言っていることは奴に通じているのだろうか。通じていないのであれば仕方がないのだが、通じているのであればなにかリアクションが欲しいところである。じっと奴と目を合わせながら真横に移動し、自分の青色の羽を奴の赤い羽根に擦るくらい近くに座る。

「俺の名前はマルコ。お前、名前は?」
「・・・・・・ナマエ」

しばらくの沈黙のあと、目を合わせずに呟かれた言葉は紛れもなく人の言葉をしていた。それに少し驚きながらも、それに気付かれないように言葉を続ける。

「ナマエか・・・ここには一人かよい?」
「前は仲間が居たが、今は一人だ。火山が死んだから皆引っ越した。」

今はもうどこにいるのか、生きているのかさえ解らないのだと少し寂しそうな声色で呟いた奴はどこか遠くをみるように目を細めた。ならば俺とともに来ればいいのに、と呟きそうになって嘴を震わせる。言葉を紡ぐのは簡単だが、最近になってからは失ったものが多すぎてその言葉を吐き出すことに躊躇したのだ。言ったところでお前に守りきれるのか、と頭の中で声がしたような気がした。


紅蓮の空

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